暁 〜小説投稿サイト〜
魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Bパート 】
[19/20]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ず、しかし、口元に浮かべた笑みに『愛』がある。あったのだ。
視界に入っていないのか、その写真をテナルディエはその辺の雑草と同じように踏みつける。
?
――――――ガチリ。
?
再び、撃鉄を鳴らす音があたりに響く。
?
「答えぬか!?ザイアン!」
?
そう告げる魔王の手には、さらなる銃が握られていた。拡散式多撃銃――ショットガンを。
ザイアンは黙したまま何も語らない。
止まった空気に耐えかねたのか、父は口を開いた。
?
「連れていけ!銀の流星軍の居場所を吐かせるのだ!」
?
縄をかけられながら、ザイアンはこれから訪れる未来を想像する。
既知財産を有しているだけ、自分はまだ父によって生かされるだろう。
だが、そのあとはどうなるのだろう?
突如として、目の前が曇るのを感じるザイアン。引っ立てられ、連れ出される彼に、フェリックスは忌々しく吐き出した。
?
「愚かなサイ」
「お互いに」
?
サイ――昔、騎士のおままごとに付き合ってくれた、息子ザイアンへの愛称。
吐き捨てた本人に名残惜しさがあったかは分からない。ただ、ザイアンにはそれらも含まれているように聞こえてきた。
こうして、父と子は決定的な亀裂と決別を残した。
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
通路を連行される間、ザイアンの耳に勇者の言葉がよみがえる。
?
――心に灯した流星の輝きを、消しちゃいけない。勇気ある限り――
?
(……勇気)
?
暗く閉ざされつつあったザイアンの思考に光が宿る。
そうだ。オレにはまだやるべきことがある。グレアストが考案したお得意の拷問処刑によって、情報を奪われて死す可能性があったとしても、あきらめるわけにはいかない。
たとえ生きることがどんなに苦しくても、感じられても、逃げるわけにはいかない。
絶望の海原に勇気の帆を張り続けて。
?
?
?
?
?
?
?
?
?
「お乗りください」
?
丁重に――とは言い難いが、ザイアンはそのまま兵士に囲まれ、中央都市セレスタの出口あたりまでたどり着く。
用意された馬車に乗り込めば、もう自分が逃げ出す機会はなくなる。
?
(あの人も、このような気持ちで馬車に乗り込んだのだろうか?)
?
獅子王凱の異端審問の噂は、ザイアンの耳にも届いていた。ガヌロンの代理としてグレアストが馬車を引っ提げて、このようにセレスタへ訪れたことがあったのだ。
?
(でも、勇者は希望を捨てず、文字通り生還したじゃないか)
?
身を焦がす清めの炎。炎の甲冑さえも、あの人は乗り越えた。
オレはあの人のようになれない。けれど、あの人のような生き方を選びたい。
?
――それは、ずっと前、ティグルが凱に白露したのと同じ想い。
?
ザイア
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ