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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Bパート 】
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「平和……平和という言葉を勘違いしているのではないのですか!?」
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ザイアンは怯みつつも激しく言い返す。
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「我々が言う弱者にも、父があり、母があり、子を授かってはまた戦場に駆り出して――戦火を求めることが父上の望みなのですか!?」
「――――どこでそんな戯言を吹き込まれた?まさか……ティッタとかいう侍女にでもたぶらかされたのか?」
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ザイアンの胸中に絶望の一矢がよぎる。目の前の父には自分の言葉の意味どころか、言葉そのものが届いていないように感じた。風と嵐の女神エリスに信仰深いわけではないが、せめて言葉を風に乗せて届けたいという願いがザイアンにあった。
それでも、ザイアンはあきらめず言葉を尽くす。
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「流星と逆星が、ただぶつかり合って、それで本当に『真の平和』とやらが訪れると、父上は本気で考えておられるのですか!?」
「そうだ」
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言葉を交わし、意志を確かめて、文字をしたためるほどの文明を持つ人間が、竜や獣のように喰らいあうべき事が、あるべき姿なのか。
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「そうやってただ斬りあい、撃ちあい、否定しあうだけなら、終わることなんてありません!」
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自分の思っていることを吐き出したザイアンに対し、テナルディエは確信を込めて重低音響く声で叫んだ。
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「終わらせるまでよ!真の諸悪たる『弱者』を全て滅ぼせばな!」
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―――――本気で父上は言っているのか?
?
ザイアンは全身の血が、凍漣のように凍てつく感覚に襲われる。
いや、魔王の凍漣的な思考感情、氷血晶(タリスマン)は『冷徹』の一言に尽きる。勇者のような、氷結晶(クリスタル)を宿す『冷静』な分析は一欠けらも感じられない。
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「本気で……おっしゃっているのですか!?弱者を全て滅ぼすと!?」
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――――弱者とは、存在自体が悪なのか?
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怒り任せとはいえ、そのようなことを平然と吐けるのか?
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「言え!ザイアン!貴様は掴んでいるはずだ!『銀の流星軍―シルヴミーティオ』の所在を!これ以上戯言を抜かすと、貴様とて許さんぞ!」
「父上……」
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ザイアンは震えながら、フルセットの髭を蓄えている、憤怒に震える父の顔を見上げた。瞬間――
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――――ガチリ。
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ふいに、何か鉛同士を撃ち合う音が聞こえた。
ザイアンは知っている。聞いたことがある効果音に、彼は思わず畏縮する。
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(……撃鉄小銃(ハンドガン)……!?)
?
鈍い(くろがね)の光がザイアンの瞳を射抜き、無意識に頬を冷や汗が一滴流れる。
それこそ、次世代の『弓』であり『槍』ともいえる『銃』が火を噴く予備動作だということを。
生命の稲穂を刈り取る銃砲、それを実の息子に向けるのか?
正気かと――思えてしまう。
いや、正気だからこそ、本気で引けるのだ。まだ猶予
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