第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Bパート 】
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行しろと命令したに違いない。ザイアンは周囲の兵士たちに固められ、総指揮官の天幕に通された。つい先立ってここを訪れたとき、ザイアンは周囲の者たちと同様に、父上への忠誠心熱き兵士だった。
そう――アルサスを焼き払えという苛烈な命令にさえ、怯むことがなかった。
だが、今は父の威を借りていた『仮初』の自分と全く違う。
銀の流星軍という別勢力の、それも大使ともいうべき存在だ。少なくとも、ザイアン自身はそのつもりだった。
(……『相変わらずの光景』だな……あの頃から全く変わっていない)
燃える水を採取する為に発掘作業を『機械』のように続ける『元アルサスの民』たる奴隷たち。
かすかな一瞥をくれただけで、ザイアンはそれほど見向きもしなかった。
ひとりの女性が――貴重な『燃える水』をこぼした。
それを見かねた『監視』が鞭を持ち、痛めつける。誰も助けようとしない。
ザイアンにとって、既に見慣れたはずの光景だ。だけど、眼をそむけようとも、耳をふさぎたくなるのは本当だった。
ヴォルン家の屋敷の前――そこには待ち構えていたかのようにたたずむ父の姿があった。
目線があった途端、獅子の牙のように鋭い父の目がザイアンを射抜いた。
「……ザイアン」
「……父上」
いつもと同じ出会いがしらの一声。ザイアンはその視線を避けようとしたものの、寸の所で思いとどまり、真っ向からそれを受け止める。
フェリックスはそんな彼の変化にさえも気づかない。ザイアンを連行した兵士に、乱雑に命ずる。
「貴様等は下がれ。ザイアンとは二人だけで話をする」
ザイアンを連行してきた兵士たちは、背筋を整えて敬礼した後、二人のテリトリーを離れていった。
やがて彼等の姿が見えなくなるのを確認すると、ザイアンは心を絞るような気持ちで問いただした。
「父上は……この戦争をどうお考えなのでしょうか!?」
「なんだと?」
?
自分の望みに沿って行動するはずの息子が、最も矛盾した質問を投げかけてきた。
――――何故だ?という、指導者にあるまじき疑問符が浮かぶ。
テナルディエは自身に問う。
だが、ザイアンの表情は真剣だった。
?
「――銀の逆星軍、捧げた理念行動を、ちゃんと父上の口から聴きたくて戻りました」
?
公約ではなく信念を。貴方が信じる正義は何なのか?
数秒後、テナルディエ公はゆっくりと口を開く。
?
「ブリューヌから、真の自由と平和を取り戻す。いかに流星へ願おうと決して手に入らぬ平和を――」
?
相変わらずの、重みある魔王の発声。まるで、猛獣が檻にこもって唸り声を散らしているかのよう。
建前を聞いているのではない。口には出さず、瞳と視線でかの魔王たる父に訴える。
?
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