第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Bパート 】
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の発言に対し、一人の武官にして秘書官たるスティードが臆することなくこう申した。
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「ですが閣下、極端に搾り取ろうものなら、やがて反乱分子が生まれます」
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対してテナルディエはこう切り返した。「絞り方が足りぬからだ」と――
先ほどの『亡命者』が生まれたのも、その一端にすぎない。もしこれが連続で動こうものなら、ねじ伏せ続けるのは難しいはずだ。
心まではねじ伏せない。ということを。
なおも説き伏せるようにテナルディエの論理は続く。
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「生きるだけで精一杯では、反乱などという考えは浮かべるなどありえぬ」
「閣下。わたくしは何も『光景』を見て申しているわけではありません」
「私もだ」
「では何故?」
「決まっておる」
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弱者だからこそ徹底的に。奴らの果実を絞り上げた先の『蜜』したたる世界に辿り着くことは、我らの自由なる権利であり正義たる使命なのだ。
生きるだけで精一杯ならば、喰らうか喰らわれるかの二極選択しか取れないのだ。
勇気を持たぬ論理行動など、所詮そのようなもの。
本来、テナルディエ本人の前でこのような態度をとるスティードは、自殺行為に等しい言動を繰り返す。だが、テナルディエはまるで過ちを犯した子供をあやすような態度で説き伏せる。
むしろ、口答えした勇気をたたえ、こう諭した。
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「見誤るな。愚かな民を『導く』ということは、何も戦争だけではないということを」
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それ以上、武官は何も追求できなかった。テナルディエの言葉も分からなくはなかったからだ。
騎手は鞭を振り上げ手綱をつなげなければ、たとえ『魔法の馬バヤール』といえど無恥通り走り続けるだろう。
民とて同じこと。辞書、英知を持たぬゆえに、脆く、愚かで、蜜の滴る理想世界どころか、草木一本生えぬ不毛の大地へ辿り着く。
アルサスの過酷な労働環境監査を再開しようとしたその時、一人の兵士がテナルディエの元へ報告を届けに来た。
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「閣下――――ザイアン様が御帰還です」
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耳元へ告げられたその名前に、テナルディエは眉をひそめた。
ザイアン=テナルディエ。父フェリックスの命令を受けて、アルサス焦土作戦の総指揮官であった息子。
この再開は、数多の意味で『決別』を意味するものであった。
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凱と別行動をとったザイアンはまともに休むことなく、アルサスの中心都市セレスタへ向かった。
正確には、連行だった。
彼がセレスタの門をくぐったときに複数の兵士が出そろっていたからであり、ザイアンは今に至るまでの経緯を語ろうとしなかったからだ。
おそらくフェリックスはそれを聞いて、すぐに連
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