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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Bパート 】
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アリファールの風と共に乗り、凱の聴覚に『譜面』となって導き出される。
そこから生まれる『不殺の一撃』は、相手への――弱点と敗北――を同時に叩き込むことを可能にする。
『神算』――『神速』――『神技』――この三拍子がある限り、敵に間断なく敗北を馳走することが出来るのだ。
加えて、凱自身による超進化人類エヴォリュダーとしての力がある。
本来、凱自身は容易に『人を超越した力』を、ましてや生身の人間に向けるつもりはない。
しかし、ユナヴィールの村を焼き払い、少女の母親を討った奴らに対し、凱はエヴォリュダーの力を自制するつもりなどなかった。
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「馬鹿な……こんなことがあってたまるか!?」
?
御頭らしき男も、ただ愕然としている。
圧倒的有利と思っていたものが、テーブル返しの如く一瞬にして覆された。
そして、相手が今まで自分たちが『焼き払った』者達とは別種の存在だと悟ったときには、もはや凱から逃げられない状態となっていた。
?
「く……くそ……くそおおおおおおおお!!」
?
自暴自棄になった、指揮官の男。
精神的にも追い詰められた形で勇者(ガイ)に挑むも、そんな『シミ』にすらならない絶叫では届きもしない。
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(この男の特攻……勇気ゆえの行動じゃない)
?
かすかに一瞥をくれた、哀れみを含んだ凱の仕草。
大気に煌めく一条の『白銀の閃光』――――銀閃によって、指揮官の男はわき腹を薙ぎ払われてその場に倒れる。
各国勢力圏の確立で、剣と馬が戦場を支配する『総』の時代となった。
だが、それでも、信じがたいことに――流星が地に舞い降りる――現象と同等の『確率』で存在するのだ。
たった一人で万軍に匹敵し、(つわもの)達で埋め尽くされた海原を、剣という(エール)で突き進む、黒船の如き勇者の存在が。
その強さ――賢さ――まごうことなき勇者王。
?
「あんた……本当に……何者なの?」
?
皆唖然としている中、唯一口を開けたフィーネでさえ、それをつぶやくことが精いっぱいだった。
?
「まるで……ヴィッサリオンみたいだ」
?
こんな感想を述べたのは、果たして何度目なのだろうか?
フィーネも、それにふさわしい力を持った人物を、一人知っていた。
英知を振りまくような風貌なる凱に、どこか彼の傭兵団長と似た雰囲気を感じ取る。
遊撃傭兵団。その名は『白銀の疾風――シルヴヴァイン』
けっして出頭(でずら)の多い組織ではなく、長のヴィッサリオンは撤退戦のおり、積極的に殿(しんがり)を務めていた。
そして二人は出会った。とある負け戦の最中に。
過去にひたっているフィーネの耳に、凱が周囲を一瞥する。
?
「片付いたか……」
?
周りを見渡すと、凱の獅子奮迅なる戦舞劇によって、行動不能となった兵達の山が築かれている。

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