第21話『奪われた流星の丘アルサス〜忍び寄る魔王の時代』【Bパート 】
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「こ……こんなことって……」
「ガイさん……」
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時間にして50……いや、30数える間もたっていないだろう。
一瞬にして巻き起こった剣舞が、彼ら敵兵たちの戦闘力を常識ごと抉りとっていく光景に、フィグネリア、ティッタ、そして少女はただただ驚愕するしかなかった。
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「一兵たりとも逃がしはしない!報いは必ず……くれてやる!」
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一同はあまりの獅子の猛々しい戦いに、身震いすることさえできない。
凱のアリファールを盾で防ごうとした騎兵が、その盾ごと叩き伏せられ落馬する。
ジスタートが誇る黒竜の武具にかかれば、鉄製の盾、合金の鎧の強度など皮羊紙に等しい。
本来ならばその一振りで、敵兵の生命は甲冑と同じ『真っ二つ』という運命を共にしただろう。
だが、勇者の持つ竜の牙『銀閃の長剣』は、生命を食い殺すこと能わぬ、不殺の刃。
場に存在する大気が、白銀の長剣に幾重にも取り巻いて『見えざる鞘』となり、銀閃アリファールそのものを『峰』に変えているのだ。
そのような為に勇者の持つ竜具は凡刀もいいところだが、骨を曲げ、アバラをへし折り、少なくとも3日3晩戦闘不能にすることはできる。
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「……ガイ?」
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漠然としながら、フィーネは彼の勇者の名をつぶやいた。
どのような生物であれ本能を全うするにあたり、生き延びるための論理行動を司る『頭脳』が存在する。
しかし、その頭脳によって与えられる思考から神経を通じて、行動へ移行する過程で誤算率が発生する。
数多の戦士達はそれらの『誤算』を『精算』する為に鍛錬を積むものだが、獅子王凱の論理行動は戦闘における『概念』そのものが違う。
三柱の神学関数――『sinθ』『cosθ』『tanθ』及び『X』『Y』『Z』にて定義される、関節の可動範囲。敵の体格を構成する骨格構造。運動力発生の基礎たる筋肉器官。敵が装備する得物の主力武装付属。そういった要素を瞬間的に検索把握し、誤算率を補正して凱の持つ才能、宇宙飛行士時代にて培われた『神算』にて見切る。
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『人間工学』という『識』の力を広げて、『知』を体現して『最短結論』を導く。頭脳にて描いた仮想戦闘(シュミレ―ション)を現実に導いているだけに過ぎない。
その最短最速結果、動きそのものを消すことをたった一言で言い表せるのがあるとすれば――
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―――――『神速』に他ならない。
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目にしたものには、『神速』は『神技』と等しく思うかもしれない。
一閃。なんてことない銀閃の一振りは、見る者にとって絶技と捉えるだろう。
心臓の鼓動や筋肉の縮小、呼吸といった『原音』が、
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