暁 〜小説投稿サイト〜
シベリアンハイキング
タルクセナート
山中の住まい

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この辺り一帯の鉱山資源が豊富であることは以前から知られていた。石炭は古くから掘られ、半世紀程前からの国を挙げての工業化がそれに拍車をかけた。そして、数十年経った後、一つ二つと石炭が尽きる山が出てくる。しかし、別段焦ることはない。次の山へ移れば良いのだから。シベリアには無限の富がある。そんな考えが普通で、人の手が入りながら、見捨てられた山々が既にあちらこちらに点在していた。人間の横暴が、自然の深い懐のおかげで一応黙認されていた。全てそんな時代の話である。
ドミトリーの夜営地はそんな山中深くにあった。木々て覆われた林の中の細い道を進むと、岩が顔を出す殺風景な道に変わる。辺りを見ると、採掘のためか、はたまた道を作るためか、ダイナマイトの発破を試みた形跡が目立っていた。徐々に標高が上がっていく。すると、道が急に広くなり、数ヘクタールはあろうかという開けた土地がユスフの眼前に広がった。そこにはかつて鉱夫が寝泊まりしていたであろう小屋がいくつか並ぶほか、採掘作業のための施設が数件あった。

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