アージェント 〜時の凍りし世界〜
第三章 《氷獄に彷徨う咎人》
舞うは雪、流れるは雲B
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めるか、躱すかだな。見てから決めるか。)
敢えて相手の策に乗る道を選び、そうと気付かれぬ様に攻勢を緩める。元々が千日手の状態だ。この特大《アンサラー》は対艦船、対城塞、あるいは対軍用の魔法であり、対個人戦には刀身を短くした改良型を使う。近付けない事は出来るが、ある程度以上のレベルの敵には当たらないのが実情だ。
二分の時は、一瞬にして過ぎた。八神はやては視認出来ないが、広域魔法にとってはさして関係ない事は、同じく広域魔法を使う暁人にとっても常識だった。
『はやてちゃん……あの人。』
「気付いとるん……やろうなぁ。」
ユニゾンしたリィンの呟きに答えるはやて。恐らく相手は、白峰暁人は此方の意図に気付いている。その上で、時間稼ぎに付き合っている。そういう動き方だった。
「それでも対策しないって事は……何か狙ってるんやろなぁ……。」
撃つべきか、待つべきか、迷うはやて。そこに、
『……ごめんなさいはやてちゃん。使い魔の子に逃げられちゃった。』
「シャマル……構わへんよ、気付かれてた時点で捕縛は無理やと思ってた。雪の中は向こうのホームグラウンドやしな。」
そう、相手は元々こちらの襲撃に気付いていた可能性が高い。そうでなければ、一連の動きに説明がつかない。
「……けど、ただで逃がすのも癪やなぁ。」
まだ、白峰暁人という人間は底を見せていない。ならば、
「一枚でも多く、手札見してもらうで。」
シグナムとヴィータが効果範囲に巻き込まれていない事を確認する。魔力の充填も、魔法の照準も完了している。……後は、
「……行くで、リィン。」
『ハイです!』
「『灼熱の地より吹き荒れろ、巨人の焔!《ムスペルヘイム》!!』」
轟音と共に解き放たれた魔法は、直ちに紅蓮の業火へと代わり、生きとし生けるもの全てを焼き払う勢いで、暁人へと突進した。
暁人は、その瞬間を視覚でも、聴覚でもないモノで感じていた。それは膨大な経験が育んだ予測と、第六感めいた直感の化合物であり、未来予知じみた精度をもって暁人の脳に訴えた。
「……来たか。」
それだけ呟くと暁人は、推定される魔法の飛来方向に、氷の刃を向ける。そして、『アンサラーの術式そのものを書き換えた』。
「魔力は既にある。細かい照準も要らない。後は……純粋な威力勝負か。」
再装填したカートリッジをさらに四発、追加で撃発し、氷の刃が崩れ、ハボクックの先端に収束していく。
「………遠き地より吹雪け、巨人の吐息!《ニヴルヘイム》!!」
それは奇しくも、はやてが行使したものと同系統、反属性の魔法。相反する二つの属性の激突は膨大なエネルギ
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