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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 10
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いいのさ」
「うむ……」
「――それと、おまえの力で彼らの生活が豊かになれば、より上等な料理が用意できるかもしれない」
「どういうことだ」
「その牙と爪、激しい炎の力をもってすれば岩土や木々を除くこともできるだろう。そこに人が田畑を作り牧草地を広げて牛や羊の数を増やせば、安定して捧げ物を用意できる。彼らの神として生まれ変わるのだ、黒き竜よ」
「なにやら体よく利用されているような気がするが……」
「美味い飯が報酬では不服か?」
「否。よかろう、我は神となる」
「では、黒き竜よ、おまえの名はなんという?」
「我に名はない」
「では、料理のついでに俺から名前の贈り物だ。黒き竜よ、おまえの名は『ヘイフォン』だ」
「おお、人の子が、定命の者が我に名をつけようというのか、その名を受け取れば、それこそが我が『真の名』になってしまう」
「ではみずからで神としての名を考えるか」
「ヘイフォン……。不思議な響きの言葉だ」
「俺の生まれた世界にある言葉で、意味は黒き風≠セ。」
「黒き風……。よし、おまえのつけた名が気に入った。おまえのつけた名こそが我にふさわしい。これより我が名はヘイフォンだ」
「では彼らに挨拶しに行こうじゃないか、ウォルトンの守護神ヘイフォンよ」

 秋芳は竜の背に乗り、セリカとジャレイフたちのもとへと戻った。





 フェジテ。
 魔術学院の会議室では講義終了後、連日のように喧々囂々の議論がおこなわれていた。

「異邦人の入学は滅多にありませんが、まったく前例がないわけでは――」
「――彼の身元については公爵家が保証しています。たんなる流れ者とはわけが――」
「わかっている。それに本人も最下位とはいえ貴族の序列にくわわる以上、無下にはできない」
「入学自体は問題ありません。ただこの微妙な時期に入れるのはどうかと。あと半年近く待ってもらい春から他の新入生と共に迎えては」
「あの魔力容量と意識容量。系統適性検査の結果はご存知でしょう。アルフォネア教授を除けば我が学院はじまって以来の逸材ですぞ。それを半年以上も寝かせておくなどもったいない!」
「そうは言ってません」
「へそを曲げて他所に引き抜かれてしまうかも。学院に籍を置くだけおいても……」
「だからとりあえず入学だけさせて――」

GOOOAAAAAッッッ!!

「んなななッ、なにごとだ!?」

 百家争鳴の議論をも打ち消す雷鳴の如き轟音。
 なにごとかと外へ出てみれば、漆黒の竜が翼をはためかせて舞い降りるところだった。

「なんだって、ドラゴン!?」

 その背には黄金を溶かしたかのような豪奢な金髪と宝石の煌めきのような瞳をした白皙の美女が立っている。

「ア、 アルフォネア教授!?」
「おやおや、在籍講師陣
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