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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 1
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え? なんのことですか?」
「おもに声の仕事をしている役者さんだろ。いや、正確にはその卵といったところかな」
「な、なんでわかったんですか? まさか、預言とか読心術とか呪術ですか!? 星読みとか」
「……普段は眼帯で隠してあるこの目。実は青紫水晶を磨いてできた翠竜晶を埋め込んで生来の目の代用としている。この呪王霊眼(オーディン・アイ)は優れものでな、浄眼とも呼ばれて、あらゆる穏形を見破ることができ、霊的存在の姿をも見ることが可能で、さらに一種の暗示をかけることもできる。そしてこの義手には気硬銃という霊気の弾丸を発射する銃が仕込まれている」
「やっぱり呪術師だったんですね! あ、でも陰陽師じゃないってことは、もぐりの人ですか?」

 強力な動的霊災との激しい戦闘で霊障を負い、一線を退いた祓魔官。今は呪具の売買をしている特殊なBARのマスターで、店にあつまる情報や呪具を目あてに多くの陰陽師がよく訪れてくる――。
 彩菜の脳裏にそんな筋書きが浮かんだ。

「……という設定だったらいいなぁと思っている」
「へ?」
「表向きはBARのマスター。だがその正体は凄腕陰陽師。そんなキャラになりたいなぁ、と」
「呪術者じゃ、ないんですか?」
「Oui」
「普通の人なんですか?」
「そう」
「ええと、元祓魔官かなんかで、実は裏で呪具の売買をしている特殊なBARだったりは……それにさっきの石を投げたのって、なにかの呪術なんじゃ……」
「言ったろう、あれはただのおまじない。乙種乙種。でも半分正解。この店ではきちんと許可を得て陰陽庁謹製の護符などをあつかっている。たとえばこんな」

 彩菜は梵字がびっしりと書かれた一枚の札を手渡された。
 尊勝仏頂陀羅尼。
 平安時代に藤原常行という貴族が神泉苑のあたりで百鬼夜行に遭遇したさい、この陀羅尼の書かれた護符を身につけていたため難を逃れたという逸話が『今昔物語』に記されている。また『大鏡』では藤原師輔がこの陀羅尼を唱えることで同様に百鬼夜行をやりすごしたという話がある。
 妖怪変化のたぐいに効果抜群のお守りなのだ。

「お近づきのしるしにどうぞ」
「え、でもこれ、高価なものじゃないんですか? あたしそんなにお金ありません」
「お代は出世払いでいいさ。きみがお酒の飲める年齢になって、女優として活躍するようになったらこの店を贔屓してくれ」
「女優だなんてそんな……。あ、そういえばさっきなんであたしが声優の卵だってわかったんですか?」
「なぁに純粋な推理だよワトソンくん。まずきみの動作。ほんの少しだが大げさな、芝居がかった感じがする。それに声。発声練習を受けたことのある滑舌の良さと力強さがある。それと荷物。べつに盗み見るつもりはなかったが、派手に自転車を乗りつけただろう。かごに入れたカバンの
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