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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 1
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れ。あやしさ大爆発)

 血で書かれたかのように真っ赤な字の経文や、やたらと顔と腕の多い仏像。錫杖や独鈷杵、魚板といった法具。見慣れない漢字や梵字で書かれたお札。勾玉、ヒランヤ、ナザール・ボンジュウ――。
 店内を埋め尽くすあやしい品の数々。本棚には月刊陰陽師が創刊号から最新号までそろっている。たしかに呪術好き御用達の店であることはまちがいないらしい。
 五分ほど過ぎただろうか、ほかの客が来たらどうしようかと心配していたが、幸いなことにだれも来なかった。彩菜が落ち着きを取り戻したころにバーテンダーがもどってきた。

「かわいそうに、たしかに死んでいたよ。清掃局には私から連絡したからすぐに片づけてくれる」

 そう告げた言葉の内に、かすかな憂いと怒気が込められているのを彩菜は感じた。

「あ、あたし、その……そんなつもりじゃ、なかったんです。急に目の前に……。ほうっておくつもりもなくて、ただ変な声とか、とびかくびっくりしちゃって……」
「わかっているさ、マドモアゼル。きみのせいなんかじゃない。あれは自転車で轢かれたような傷じゃあなかった」
「え?」
「全身に細かい傷がたくさんあった。それも刃物ではなく動物の牙や爪でつけられたような。猫同士のケンカとは思えないがね」

 まだぬくもりの残る死骸からは一滴の血も流れていなかった。まるで全身の血を吸い取られたかのように

「なに者かがあの猫をいたぶり殺し、きみの自転車の前に放り投げたんだろう」
「そんな、ひどい……」
 
 轢いた瞬間、猫は悲痛な叫びをあげた。あの時点では生きていたのだが、あまりのことにそのことはすっかり失念していたしバーテンダーも血の件もふくめ、あえて触れなかった。

「あたし、わからないです。あたしにそんなことするのがいるなんて」

 そんなことをする人。とは言わなかった。
 悪質なストーカーかなにかの仕業かと思いたかったが、彩菜は無意識のうちに猫ではなく自分が人ではない存在に狙われていると感じていた。

「しばらくのあいだあの道は避けたほうがいい。それとよくないものに狙われているのなら陰陽師に相談してはどうかね」
「はい。でも呪捜部とかは、ちょっと……」

 彩菜くらい若い世代は陰陽師に対して偏見も忌避感も持っていない。
 凶悪な霊災を修祓する祓魔官の勇姿など、純粋にかっこいいと思う。だが呪捜官となると話は別だ。厭魅や蠱毒といったおどろおどろしい呪詛。人の暗い情念をあつかう呪捜部はどうしても好きになれなかったし、なにより自分がだれかに呪われているなどと、認めたくはなかった。

「それに、祟られたり呪われたりする心当たりなんてないです」
「きみのような活動をしているのなら身におぼえがなくてもつけ狙われることはありえるだろう」

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