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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 1
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なんなのっ!? あたしはだれのものでもないっ、花嫁になんかならないっ、あっちにいって!」

 がさがさがさがさ……。
 暗がりのむこうになにかがいる、なにかが蠢いている。
 人の頭をした巨大なゴキブリが迫ってくる――。
 そんな連想をしてしまい、ひときわ大きく身震いして逃げようとするが、足に力が入らず転倒しそうになる。

「変質者にでも出くわしたのかい、マドモアゼル」

 ベストにネクタイという、いかにもバーテンダーという恰好をした瀟洒な中年男性が声をかけてきた。

「あ、あの、えっと猫が、猫を……。あとなんか変なのが変な声で……」
「急に猫が? 轢いてしまったのかい?」
 
 その男性は周章狼狽する彩菜を落ち着かせ、前後する説明を理解してくれた。

(あのアイパッチと義手? なにかのコスプレ? それにしても渋くて良い声……。衝撃波で空を飛んだりテレパシーで娘とつながっている貴族の末裔のおじさまみたいな声をしてる)

 このバーテンダー。なにかの仮装なのか、右目に海賊のようなアイパッチ。左腕には鋏のような義手を装着しているのだが、妙に様になっていた。

「――それと妙な声が聞こえると、ふむ……」
「ほ、ほんとうなんです」

 いきなりこんなことを言って、頭のおかしな子だとおもわれたかも。落ち着きを取り戻した彩菜はそんな危惧を抱いたが、バーテンダーは真剣な表情で彩菜が駆け込んできた暗がりを見つめていた。
 視線の先の闇の中で、いまだに得体の知れない奇妙な存在がうごめいているような気がする。
 バーテンダーが地面にころがる石ころを鋏でつまむと片方の手で印を切り、暗がりにむかって投げつけた。
 すると不思議なことに闇の中にただよっていたあやしい気配は潮が引いたようにかき消えていった。

「え? いま、なにを……」
「なぁに、ちょっとしたおまじないさ。悪い虫が退散するようにってね」
「ひょっとして、おじ……お兄さんは陰陽師ですか」

のどまで出かかった「おじさん」という単語を飲み込んで彩菜がたずねる。

「陰陽師! Brilliant!」
「ぶり……」
「そう思ってくれたら光栄だが、あいにくと陰陽師ではない。だが呪術を愛する気持ちは彼ら以上だと自負しているよ。ほら、あそこ」

 呪術BAR『メイガス・レスト』指さした先にある看板にはそう書かれていた。

「じゅ、呪術BAR!?」
「Oui 中で少し休んでいくといい。私はちょっと様子を見てくる。猫の死体をそのままにしておけないからね」

 彩菜を席に座らせたバーテンダーは妖しい気配の去った暗い路地に消えていった。彩菜はだれもいない店のなか、どうしていいのかわからずかたまったまま、店主が返ってくるのを待った。

(うわぁ……、なにこ
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