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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邪願 1
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るふしだらな手のひらをなんどもはたくが執拗に侵入を繰り返す。下に気を取られているうちに上着のボタンがはずされていく。

「ちょっ、あ、もうっ。ダメって言ってるでしょ、バカぁ……」
「は〜い、汽車がとーりまーす。山越え谷越えシュポポポポ★」
「ひゃんっ」
「おっと、山の上に美味しそうなサクランボを発見。このサクランボはだれのものだい? 京子のもの? それとも俺のもの?」
「こ、このサクランボはあたしのものよっ、で、でも秋芳君がどうしてもって言うなら食べさせてあげる。――アッ、あ、ああっん……あ、ちょ、ちょっとまって秋芳君。そ、そこはダメっ」
「谷底に綺麗な泉を見つけたぞ。喉を潤わさせてくれ、水を汲むよ……」
「ああッ!? そ、そこはダメ! だめだめダメダメ! だめったら、もうっ。ちょっとストップ! まってちょうだい、お願い、やめて。ねぇ、まって。まってったらっ、まって……まちなさい!」
「ぬおっ」
「瘴気を感じるわ、それもそんなに遠くないところから」
「なぬ〜!?」

 蜜のように甘美なひと時に水をさされ、渋面を浮かべて見鬼を凝らす秋芳。なるほど、たしかに少し離れた場所からただならぬ気配を感じる。

「聖蓮寺の敷地外か……」
「この瘴気の強さ、動的霊災かも。隠形(こっそり)行ってみる?」
「住職に連絡して祓魔局にでもまわせばいいだろう、俺たちが出張る必要なんてないし、こちらに向かってきてもやり過ごせばいい」

 キャーッ!

 瘴気の方向から若い女性のものらしき悲鳴が聞こえた。
どうやら人がいるらしい、さすがに放置するのははばかられる。

「早く行かないと!」
「まったく、人の逢瀬を邪魔しやがって……」

 衣類の乱れを正したふたりは悲鳴のもとへと駆けた。





 少しさかのぼって、悲鳴を上げた人物の話になる。

 その日、一八歳の誕生日をむかえようとしていた花園彩菜ははずむような足取りで帰路についていた。
 誕生日が嬉しいのではない、ボイスレッスンのあと事務所のマネージャーである松岡からオーディションの話があったのだ。合格すれば来期アニメのヒロイン役を得がもらえ、さらにエンディングソングまで歌わせてもらえる。人気アニメの続編でかなりのヒットが期待されていた。
本格デビューのチャンスなのだ。
 ずっと児童劇団にいて、高校に入学すると地下アイドルとしてライブ活動もしはじめた。そのさいに松岡に声をかけられて今の声優事務所に所属するようになった。アフレコ現場になんども立ってガヤや生徒Aなどの声をあてたことはあるが、きちんとした名前のあるキャラははじめてだ。
 もっと大きな仕事をしてみたい。具体的にファンの数や売り上げといった数字で評価してもらえる仕事を――。
 つねづねそう思っていた
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