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真田十勇士
巻ノ百十四 島津忠恒その三
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「四郎様を悪く言うでないぞ」
「わかっております」
「真田家の主君でしたから」
「必ずです」
「その様なことはしませぬ」
「何があろうとも」
「殿に誓います」
「頼むぞ、その武田家を思い出した」
 鹿児島城を見てというのだ。
「懐かしさもある、しかしな」
「はい、小さな城なれど」
「守る兵達は凄いですな」
「夜とはいえ強い気を感じます」
「これ以上はないまでに」
「薩摩隼人じゃ」
 その城を守る兵達はとだ、幸村は静かな声で言った。
「あの小さな城でもじゃ」
「守りは充分ということですか」
「守る者達が強いので」
「薩摩隼人達だからこそ」
「そうじゃ、しかしな」
 幸村は城を守るその薩摩隼人達を見つつ十勇士達に話した、その目は決して諦めてはいない。
「それでもじゃ」
「我等ならばですな」
「あの城にも入られる」
「例え天下の猛者達でも」
「左様ですな」
「うむ」
 その通りだというのだ。
「侍従殿のところに行ける」
「ですな、あの城を見ておりますと」
「主殿の場所もわかります」
「それではです」
「主殿の御前にですな」
「これより」
「向かおうぞ」
 こう言ってだった、幸村は実際に十勇士達を率い夜の闇に紛れ術も使って気配も消してだった。
 忠恒のところに向かった、そして本丸の忠恒のいると思われる部屋に入るとそこにおいてだった。
 義弘の若い頃を思わせる顔の男がいてだ、幸村達に言ってきた。
「今夜だと思っておったわ」
「では」
「うむ、待っておった」
 微笑んで言うのだった。
「わしもな」
「そうでしたか」
「熊本に来ておった辺りからな」
「その時からでしたか」
「わかっておった、そして今夜にな」
「この城に」
「来ると思っておった、しかし兵達にはな」
 勇猛を以て知られている薩摩隼人達にはというのだ。
「何も知らせなかったがこれまで通りな」
「守りを固めさせていましたな」
「それを気付かれず来られぬ様では」
 この忠恒の前までというのだ。
「話は聞けぬ」
「そう思われてですか」
「守らせておったが」
「この通りです」98
「よく来た」
 忠恒は微笑み幸村主従に述べた。
「ではな」
「これより」
「話を聞かせてもらう」
 幸村達にというのだ。
「是非な」
「では」 
 幸村も応えてだ、忠恒に加藤との話を全て話し加藤からの文を手渡した。忠恒は幸村から受け取ったその文を読み終えるとだ。
 これまで以上の笑みを浮かべてだ、こう言った。
「全て聞いて読んだ」
「はい」
「加藤殿、貴殿等の考えもわかった」
 こう言うのだった。
「全てな」
「左様ですか」
「そしてだが」
 さらに言う忠恒だった。
「わしの返事だが」

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