蛇足の部 秋山殿とストーカー
【特報】秋山殿、ストーカーを撃破す!
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かと落としを食らい、あおむけに無様に伸びている。
今日はスパッツで良かったと、優花里は思う。
伊号戦車は口から泡を吹いている。これならしばらく意識は戻るまい。
そう思った優花里は、みほと警官がいるはずの遊歩道に向かって歩き出す。
優花里がみほに「奴は気絶中」とつたえ、公園の両サイドから警官たちがじりじりと油断なく公園に進むまで、ものの10分ほどだった。しかし……
……伊号戦車が気がついたとき、彼は大洗艦のキャットウォーク公園で仰向けに大の字になって寝そべっていた。
なにか頭のてっぺんがズキズキ痛む。なでると頭頂部にたんこぶができていた。
彼のめがねはどこかにいってしまったらしく、ただでさえ暗い視界は灰色のもやのようにしか見えない。彼はふらつきながら何かにつかまって立ち上がり、よろめきながら歩き出した。
「……ちがう。あんなのちがう」
伊号戦車が知っている秋山殿は、常に馬鹿がつく丁寧口調だ。
「あんなの秋山殿じゃない」
秋山殿は、常にしゃちほこばった軍隊口調だ。
「絶対に違う」
秋山殿であるからには、語尾は常に「であります」でなくてはならない。
「偽物だ」
秋山殿なら、お○く趣味の持ち主を馬鹿になんかせず、理解してくれるはずだ。
そして伊号戦車ほどのエンスーであれば、好きになってくれるはずだ。
「偽物だ! だれかが僕と秋山殿を遠ざけようとしているのだ!」
お○くの自分を嫌う普通女子たちが、秋山殿を守っているつもりで邪魔しているのだ。
本物に合わなければ! 会って本当の真摯な気持ちを伝えなければ!
伊号戦車の目には、もう何も映っていない。
優花里の元へ急がねばという気持ちだけが空回りしている。
だから、伊号戦車は何か腹ぐらいの高さにあるフェンスにぶつかると、横ばいになりながら必死に乗り越えていった。
伊号戦車は、自分がいたのが大洗艦のキャットウォーク、上甲板外周通路にある公園だったことなど、すっかり忘れていた……。
「……。
優花里さん、いないみたいだけど」
「え、まさかあいつ逃げたのでありますか?」
こちら側からも、反対側から来た警官たちも、伊号戦車の姿は見ていない。
取り逃がしたと言うことはないはずだ。
警官は幹部交番長の警部に連絡を取ると、懐中電灯などよりずっと明るい「信号灯」で公園中をくまなく調べ、公園デッキの下や舷側まで照らしたが、見つけることができなかった。
結果、大洗女子に勤務するすべての警官が非常線を張って、サーチライトまでつかって一斉捜索したが、伊号戦車の影も形も痕跡すらも、何もつかむことはできなかった。
そして、その日を境に、伊
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