蛇足の部 秋山殿とストーカー
【特報】秋山殿、ストーカーを撃破す!
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秋山優花里であります。あなたが伊号戦車さんでありますか?」
伊号戦車はもうすっかり舞い上がってしまった。
あの、あの秋山殿が今自分の前にいて、例の軍隊口調で話しかけてくる。
だから彼は聞き落としてしまった。彼女の口調が詰問のそれであったことを。
「ああ、秋山殿ぉ〜。お会いしたかったであります!
不肖私が、伊号戦車であります。
日本全国の軍事マニアのあこがれの的、秋山殿にお会いできて恐悦至極に光栄でありますっ!
本当に今日まで生きてきて……」
「――で、私に何の用?」
急に優花里の声の温度が下がる。
まるで、あのプラウダ戦の会場だった万年雪が積もる永久凍土に閉ざされた廃村ですら暖かいと感じられるほどに冷たい声だ。
「い、いやだなあ秋山殿。せっかく趣味を同じくする者同士じゃないですかぁ。
これからお互いに親睦を温めあってい……」
「寝言は寝てから言い給え。君はバカかね?」
伊号戦車は混乱した。
目のまえの秋山優花里の形をした何かは、伊号戦車を拒絶しているのだ。
それも冷え冷えとした口調の寒々とした言葉で。
嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ――――っ!!!!
間違ってもあの秋山殿がそんなこというわけないーっつ!
そう思った伊号戦車だったが、口に出してはこう言った。
「あの、なにか間違っているであります。
自分の知る秋山殿は常に明るくていねいな、語尾が『あります』で……」
「それは私が格上と認めた者に対してだけよ。
軍隊口調を使うと言うことは、目下には厳しくて当然だわ。
まして貴様がごとき唾棄すべき輩に、口を利いているだけありがたいと思いなさい」
伊号戦車は凍り付いた。何かがおかしい。絶対おかしい。
秋山殿はそんな口の利き方をしてはいけない。
偏見と差別にあえぐ全世界10億人のお○くの希望が失われる!
伊号戦車は、叫んだ。
「秋山殿はぁー! 秋山殿は、そんなことを言ってはいけないんだぁぁあああ!!!」
しかしここで伊号戦車は、まだ出していない秘蔵のお宝ネタがあることを思いだした。
「あ、秋山殿。ハンガリーが戦車を国産していたことをご存じですか?」
優花里の眉がぴくりと動く。しかし伊号戦車はそんなことに気づかずに続ける。
「実はその中に、完成すればパンター以上の高性能となったろう試作戦車がありましてね。
その名を44MTasと――」
伊号戦車は、最後まで言い終えることができなかった。
彼は気づかずに最悪の巨大核地雷を踏んでしまったのだ。鶏電池がなくとも起動する奴を。
次の瞬間、彼の視界は真っ白な光に漂白された……
「……いったい、何がしたいの?」
伊号戦車は、優花里の強烈なか
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