最終話 かくして現実は克服される
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めの原資とすることにした。
みほにとっては、戦車道は人を育てるものだ。戦車道と勝利のために人間を奉仕させるものでは断じてない。
戦車に乗るために身体を強くするのではない。戦車に乗って身体を強くするのだ。
勝つために頭脳を鍛えるのではない。戦車を運用することで、頭脳を鍛えるのだ。
戦車に乗るために精神を強靱にするのではない。戦車と共に苦労して、強い精神を養うのだ。
そして心と自分自身を磨いて、ひとかどの人物を目指すのだ。
それが戦争と、戦車道のちがいだ。みほの考える勝利は、個々の履修生が自分の人生を勝利で飾ることなのだ。だから別に試合で名をあげる必要はない。
これからのみほと大洗女子の戦いは「強さがすべて。力がすべて」という非人間的なものに対する戦いとなっていくだろう。
全国大会の一回戦も、第一戦以外はすべて順調に執り行われ、第二回戦に進出する学校が出そろった。これから一週間後に第二回戦が4戦とも異なる会場で同時開催される。
石川県の継続高校も、その一校だった。次の相手は、黒森峰だ。
「ふーん。これでパーシングを倒したから何かあるとは思ってたんだけど……」
占有離脱物の拾得に熱心なあまりダブってしまったミカ【男の名前なのに、なんだ女か】隊長の隣に、某義体の女少佐と同じ髪型だが髪を金色に染めて、ガーゴイルのサングラスをかけた、継続ジャージを着た女生徒が立っている。
しかし、彼女のジャージは継続カラーではなくバーミリオンレッドで、しかもジャージなのになぜかノースリーブだ。
「QF114mmはガワだけ。中身は変な大砲さ」
ミカが継続高校の『最高機密』を明かした。
彼女たちが見ているのは、大洗動乱に参戦したフィンランド軍の改造失敗兵器、BT-42突撃砲という異形の戦車だった。
フィンランド人がこれを18両作ってKV-1やレンドリースチャーチル、スターリンと戦い、全弾命中させて1両も撃破できないという偉業を成し遂げた。
だがこのBT-42は、それらと同等の防御力を誇るM26パーシングを3両も食っている。
「たしかにこれなら、直撃すればパーシングはおろか、マウスさえ即死ね」
「しかも反動もゲルリッヒなどに比べればはるかに小さい上に軽い武器。
ガワに合わせるため砲身ぶった切ったから、初速は落ちて精度も悪いから至近距離でしか当たらないけれど」
「そこは、腕と戦術でしょ」
これより3日前、これから翌年度いっぱいまで対外試合もせずに何をするのかと優花里に問われたみほは「人を育てるのに、試合は必要ない」と答えた。
「なにも実戦で実績を残すだけが戦車道じゃない。
大洗女子にいる3年間で、戦車道を取ったみんなにはどこに行っても通用する戦車道選手になってもら
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