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大洗女子 第64回全国大会に出場せず
最終話 かくして現実は克服される
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ど弄した結果がこれか」

 どうやらあの小さな巨人がまた裏で暗躍していたのだなと、しほは悟った。
 こんな戦いは自分らしくもない。そして西住の家の戦いでもないのだ。
 そしてこの日以降、西住家が大洗女子に何かアクションを起こすことはなくなった。

 一番ひどい目にあった原野はゲルリッヒを渡したのが島田愛里寿であると暴露しようとしたが、第三者の手に渡った為替手形に島田家の裏書きはなく、原野の持っていた『領収書』も市販の用紙に偽造印が押されただけのものであり、さらに島田家には彼の言う「家令」の男性はおらず、家令と執事の役割は2人の女中頭が担っていたため、逆に島田家から風説流布と偽計業務妨害、名誉毀損で訴えられ、その直後に姿をくらました。

 その後「第64回全国大会で、もし大洗女子が戦車の改造をせずに出場していたら」というイフは、このあとも長い間議論され続けることになる。
 そのイフは魅力的であるが故に、戦えば必ず優勝したであろうと信じる者を増やしていく。
 あらたな「大洗女子の最強伝説」はこのときに始まったといっていい。
 こうして検証しようのない「現実」は、再び「伝説」と化したのだ。





 さて、そんなある日、戦車道連盟の理事長は理事長室で、さるやんごとなきお方からの「苦情」の電話を受けていた。もちろん『私物』の電話で。
 彼はそれを全部、知らぬ存ぜぬ申し訳ない役立たずでを繰り返して切り抜けた。

(西住家から仕掛けられた戦争に、また島田を巻き込んで二虎競食の計に持ち込み、そして損失はすべて嫌らしい男どもに押しつけ、西住を含めた三者とも得をするか……。
 辻を排除したときといいまったく食えないな、角谷君は。まあわしが死んだあとにでも連盟を背負ってもらおうかな。もっともこんな小さな入れ物では、角谷君が壊してしまうかもしれんね)

 声に出して笑おうとした理事長はドアをノックする音を聞き、あわてて表情をとりつくろう。
 そして入室してきた秘書の持ってきた稟議書いくつかに印鑑を押した。
 こうして今日の彼の「表向きの」仕事が終わった。本当の仕事はこれからだ。
 といっても、彼は今回も角谷に働かせただけで、自分は何もせずに暗部に巣くっていた汚物を排除できて万々歳である。

(ははは、旧陸軍がドイツからはるばる取り寄せた「ゲ式砲」の使い古しが、思わぬところで役に立った……)

 つまり彼は、今回は連盟本部の倉庫の片隅に転がっていたガラクタを処分しただけだったのだ。



 結果、大洗女子には西住しほが「タダで」寄付した2億円と、中規模の市の歳入予算に匹敵する資金が転がり込むことになった。
 しかし、みほの目指す戦車の道を理解している華は、この資金を県の基金とし、未来にかけて持続可能な戦車道のた
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