暁 〜小説投稿サイト〜
大洗女子 第64回全国大会に出場せず
第20話 全国大会で待つもの
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 
 
 
 仕掛けは上々だ。火をつければ勝手に燃え広がってくれる。
 もちろんその中心で火だるまになっているのは、大洗女子を血まみれにしようとした陰謀の実行役である『政商』たちだ。
 そしてついに衆議院でこの事件の事実関係を調査する特別委員会が設けられ、大洗動乱以来の激震が霞ヶ関を襲っていたちょうどそのころ、第64回戦車道全国高校生大会の組み合わせ抽選会が、お台場の大型ホールで開催された。
 果たして渦中の大洗女子がエントリーするのか、そして初戦の相手はどこなのか。

 大洗女子は今年も出場する。
 そう聞いた戦車道界隈の人々は、これで大洗女子の「伝説」もとうとう終わりだと思った。
 強化された黒森峰、センチュリオンMk.2主力の聖グロリアーナ。
 M26パーシングを主力とし、さらに主砲を73口径90mmT15E1にしたT26E1/1(欧州戦線増加装甲装備)、T15E2装備のT26E4、ティーガーU並みの重装甲試作型T26E5の現物、それら合計で1個大隊分を装備するサンダース。
 そしてIS-3とT-54/1946にすべてを刷新したプラウダ。
 そしてこれらの強豪は、大洗に持てる力の120%で当たるつもりでいる。
 一方昨年の32傑のうち8人が卒業し、補充の1年生は全国水準に達していないと推測され、戦車も昨年と同じまま、士気においても背水の陣だった昨年並みとはいかない大洗女子は、相手によっては1回戦敗退もありえるのではと噂されている。
 そして、この日の1番くじは黒森峰だった。逸見エリカが壇上に進み、箱からカードを取る。

「黒森峰女学園、1番!」

 掲示スクリーンのトーナメント表の一番左のボックスに『黒森峰女学園』の文字が映った。
 壇から降りる逸見の向こう側から顔を伏せたままのみほが歩いてくる。2番目にくじを引くのは大洗女子なのだ。みほは逸見の顔を見ず、沈痛な面持ちのまま壇上に上がる。
 くじを引くみほを、観客席にいる全員が注視する。みほは静かに引いたカードを掲げた。

「大洗女子学園、2番!」

 会場はどよめきに満たされた。いきなり黒森峰のリベンジマッチになったからだ。
 だれもが昨年の知波単学園のように一方的に撃破される大洗女子を脳裏に描いた。
 しかし、みほは無表情のまま粛々とくじを引き、高く掲げたときも無表情で通した。
 そして大洗女子の面々は、黙ったまま会場を去ると戦車喫茶にも寄らず直帰してしまった。

 こうして逸見は、呆然とルクレールで待ちぼうけを食わされたのだった。





「……いつも思うんだけど、たぶんカードは初めから決まっているんだと思う。
 だって高校生大会に限れば、四強同士は準決勝でしか当たらないんだから」
(なお無限軌道杯ではその限りではなかっ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ