第20話 全国大会で待つもの
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校生大会の火ぶたが切られた。
黒森峰対大洗女子戦の会場は、ふだん民間人の出入りができない防衛施設庁下北試験場のある、青森県猿ヶ森砂丘。鳥取砂丘をしのぐ、日本最大の砂漠地帯である。
猿ヶ森砂丘は幅2km、長さ17kmの海岸沿いの砂漠地帯。
遮蔽物は全くない。当然のことながら砲戦力がまったく劣勢の大洗は連盟競技部に異議を申し立てたが、理由がないとして却下された。
試合開始前、定例の両軍隊長、車長たちによる礼が行われた。
南端と北端に位置するそれぞれの戦車隊にもどる前に、逸見がみほに言う。
「これでは奇策もなにも通じない。悪いけど覚悟してもらうわ。
私たちは大洗女子を対等以上の敵と認識している」
もちろん逸見は期待もしている。おそらくみほは自分が想定していない「腕と戦術」を駆使してくるだろうと。しかしみほは、ただ寂しそうに「エリカさん。ごめんね」と答えただけだった。
彼女からは戦いに望む高揚感も、運命に立ち向かう悲壮感も感じられなかった。
逸見は、自分の足下に真っ暗な穴が大きく口を開けているかのような気になった。
いったいなんなんだろうか。
みほからは、すべてに向けた悲しみしか感じられない。そして彼女がこれから戦うのは自分や黒森峰ではないかのような、ここの砂漠のようなむなしさすら感じるのだ。
まるで、季節が冬に戻ったかのように。
しかし今日はこの会場に、西住宗家、しほ家元も来ている。
大洗が生け贄同然となっても、『王者の戦い』を見せねばならないのだった。
試合会場、猿ヶ森砂丘では、両軍と競技役員が試合開始に向けてタイムスケジュールどおりの準備を進めている。ここまではすべて手順どおりだ。
試合経過時間を示すデジタルクロックが、マイナス10分を示している。
カウントダウンが始まる。
9分前、8分前、7分前、6分前……
異変が起きたのはそのときだった。5分前まで進んだ時計が止まった。
そして時計の表示そのものが消えてしまった。
観客たちが騒ぎ出した。
「どういうことだ?」
「なんかビジョンに表示されたぞ」
オーロラビジョンには黒地に白文字で『しばらくお待ちください』とだけ表示されている。
観客席にいた西住しほは、何か尋常ではない事態が起きたのだと理解した。
競技本部が競技の進行を止めている。
しほが見た限り何の問題もないはずだ。5分前で進行停止などということはありえない。彼女がそう思ったとき、競技時計の表示が5分前にもどった。
オーロラビジョンに大きく表示されていた『しばらくお待ちください』の表示が消えて、再び地形図と相互の配置が写った。しほもこれでトラブルは終わったものと考えた。
しかし次の瞬間、彼女を含めた観客
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