第20話 全国大会で待つもの
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・カーバイトの侵徹材のまわりに軟金属でできた傘状の『フランジ』をとりつけて75mm弾としたAPCNRという特殊砲弾を撃つことにより、少ない発射薬で高初速を与え、軽量の徹甲弾で大口径砲と同等の威力をもたせたものである。
構造はマズルブレーキを含む先端部、75mmから徐々にすぼまって出口では55mmになる中間砲身部、駐退復座機と閉鎖機や薬室、砲耳からなる後部の3つに分離できる。
なぜそのような分割構造なのかと言えば、中間部砲身にかなり無理がかかるため約400発撃つともう使い物にならないからだ。だから砲全部を引き抜かなくとも寿命の短い部分だけ簡単に交換できる仕様になっている。そのため今回の砲自体の交換も、後部だけ外して行えた。
中間部砲身はモリブデン鋼でできており、その構造のせいで工作にも手間がかかる。タングステンもモリブデンもドイツ国内では産出せず、やたらと消耗品に使えたものではなかった。
ゆえに費用対効果の最悪なこの形式の砲はごく少数しか作られず、砲弾もあまり作られなかったので、射耗すると簡単に捨てられてしまった。
自動車部の一人が、外されたW号の主砲とV突の主砲を眺めている。
「ねえツチヤさん。この2門の75mmって同じ砲身、同じ弾薬を使うんでしょ。
でもなんか作りが違うね」
「うん、それは積み方が違うから。駐退復座機の配置がちがうでしょ。
W号用は砲身をはさんで左右に1つずつ、V突用は上に2つ並べてる。
それにV突用は砲自体が少し旋回するようになってる」
「ヘッツァーが積んでるのも、同じ砲なの?」
「実はね、少しちがうよ。車高の低い駆逐戦車に積めるように最適化されてる。
だからW号用がkwk40、V突用がStuk40、ヘッツァー用はPak39。
この他に、というかこっちがベースなんだけど地上牽引砲がPak40っていうんだ」
「何か違うの?」
「うん、車載型に改造された時点で、閉鎖機と薬室が新たに設計し直されたんだって。
だからW号とV突とヘッツァーは同じ弾を使えるけど、地上用のPak40には戦車用の弾は使えない、逆ももちろんダメだって秋山さんが言ってたからそのとおりなんじゃないかな」
「ふーん……。地上の大砲ってそのまま戦車に使えないんだ」
「戦車道では使えない車両だけど、マルダーとか車台の上に対戦車砲をポン付けしたものなら地上用の砲弾を使うんだそうだけどね」
「でも、だったらこのゲなんとか砲、よくW号とV突に積めたねー」
「そこは『腕と戦術』だよ。自動車部のね」
外はすでに夜のとばりがおり、満天の星空となっていた。
しばらく雨天続きだったので、ひさしぶりの光景だ。
7月、まだ梅雨明け宣言の出ていない、しかしすでに初夏のある日。
第64回戦車道全国高
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