第19話 キルゾーン
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応じる用意がありますって」
「わかったわ」
こうして秋山優香里と下北タンクディストリビューションの原野、そしてTasの実物が写った写真データ付きのメールが、元ダージリンやルクリリの証言付きで大マスコミにじゃんじゃん送られた。もちろん何も知らない西住家と何もかも知っている島田家にも。
趣旨はつまり、Tas重戦車は防楯ショットトラップの確率が極めて高いという事実を承知していながら、原野は悪意の第三者として島田家に売却したということである。
もちろん、彼らが男だから戦車のなんたるかに暗いと言うことは伏せておいて。
「角谷杏です。波石先生はいらっしゃいますか? あ、おつなぎいただけますか?」
角谷は角谷で、消費者行政、悪質商法に関しては日本最強といわれる千葉市の「東京ベイ法律事務所」の所長、波石弁護士に電話をかける。
東京の某病院に「入院中」の島田愛里寿には、とっくにメールで知らせてある。
「えーと、次はN大学法科大学院の小鳥遊教授に……」
さらに現在の民法のオーソリティで、過去にゲームデザイナーであったという異色の過去の持ち主に直通電話をかける角谷。
こうして、大洗女子に陰謀を仕掛けた者たちへの包囲網が、着々と構築されていった。
数日後、日本全国のマスコミが一大スキャンダルとして、島田家の悲劇を報じた。
島田宗家は、戦車代金の返却のみならず、高度技術による改造費、失墜した流派の信用、そして継嗣島田愛里寿が心身症で入院した責任を問うとして、損害賠償総額200億円を求める民事訴訟を提起した。
この金額は、なぜか次々と島田家にやってきた猛者たちが「絶対に勝てる金額」として算出したものであり、最強の布陣と言われる弁護士団がドリームチームを組んで戦闘を開始した。
大間崎ホールディングスはすべてのつてを頼って応戦しようとしたが、敵弁護団の布陣を聞いただけで「試合終了だ。もうあきらめろ」と言われる始末。
それだけではなかった。消費者庁の依頼で、かずさアカデミアパーク所在の製品評価技術基盤機構(NITE)がTasの1/10モックアップを作成し、同じくショットトラッパーの代表とされるポルシェ砲塔のティーガーU、X号パンターA型との比較試験を実施、7.62mmNATO弾を砲弾に見立てて狙撃銃で撃ったところ、「前方30度から撃たれた場合にはきわめて当該現象を起こしやすい形状である」という結果になったと発表した。
NITEはたびたび欠陥疑いのある製品テストに携わっており、ここの出した分析結果はきわめて信頼性が高いとされている。
そして、試合を通じて何度も「戦死」している戦車道選手は、第二次大戦のドイツ三桁エースに次ぐ実力の持ち主といっていい。こんなこれみよがしの弱点を見逃すわけがない。
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