第18話 我等は狩人
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『お得意様』の広壮な屋敷の裏手には、高さ10mほどの防音壁に囲まれたファクトリーが10棟ぐらい立ち並んでいた。今日は何の作業もやっていないらしく、無人のまま静まりかえっている。
原野はそのうちの1棟に連れてこられ、さらにシャッターで区切られた部屋に通され、電話を通してお世継ぎ様の指示を待つ。家令が照明を点灯した。
『床にあるものが見えるか?』
原野は言われるままに視線を落とす。
そこには本体に駐退復座装置、砲耳だけの裸状態の火砲が2つ寝かせられていた。
『ある国から我が家に進呈されたものだが、我らは特に必要としていないものだ。
そちらで買い取れるか?』
大きさから言えば75mm戦車砲相当のものと思われる。その脇には専用砲弾が入っているとおぼしき、1ダース入りと書かれたカートンが12箱置かれていた。
『見た目どおりの速射砲と思うな。これは口径漸減砲だ』
「は? これがあの幻の対戦車砲といわれる……」
『――の、復刻版だ。
昔ならいざ知らず、今はクロモリ鋼などどこででも手に入る上に、どこの金属工場でも加工できる。そしてこれは三分割できて、砲身の真ん中だけ交換できる設計だった。
予備パーツも各1ダースはある。そして砲弾も競技弾、高価なタングステンカーバイトなど使わない、同じ重さのダミー弾頭だ。もちろん日本のN鋼管やD工業でもつくれるが、これは本家本元が作ったものだ』
「ですが反動はどうでしょうか? 同クラスの火砲とリプレースしたときに……」
『その答えは、お前のスマホでネット検索して調べればわかるだろう?
使えるのかどうかも』
原野はしばらく自分のスマホでなにやら検索していたが、もしかしてこれならTasの代わりになりえるのでは、と考えたようだ。
「ふむ、本社と交渉しなければ価格は決められませんが、買い取りは可能かと」
『ならばすぐにお前の電話で確認して。結果が出たらまた家令の携帯で知らせなさい。
なにしろこれは「我々」には「使いよう」がないの』
結果から言えば、まことにうまくいったというべきだろう。
本社も原野のクライアントを怒らせてこの先の「本業」に差し支えることを恐れていたのだ。
原野は社長決裁で砲2門の価格としては破格の金額で手形を切って良いと許可をもらい、その対戦車砲2門を即決で購入した。
これでこっちとあっち、両方の顔を立てることができるだろう。
それでもおそらく「腕と戦術」を過信する大洗女子は、血まみれショーの主役にされることは変わらない。
彼はそう思って、腹の中だけで含み笑いする。
原野は急いで大洗女子学園艦に向けて飛び立つ。期限は「明日」なのだから時間がない。
ブラジル産の軽ビジネスジェット
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