第16話 ハンガリー戦車哀史
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「……こんな話をご存じ?」
その場にいる皆が構える。この元が付くダージリンは、ことあるごとに格言名言にこと寄せして自分の考えを韜晦して語る奴なのだ。
しかし、このとき彼女が語ったのは、本当に「話」だった。
オーストリア=ハンガリー二重帝国は、第一次世界大戦に参戦するも、敗北を重ねる。
ドイツ人とマジャール人の国家連合だったこの国は本来多民族国家であり、帝室のたがが外れるにつれて、チェコスロバキア、ユーゴスラビア、ルーマニア、そしてソ連邦に加入したウクライナ、さらにはハンガリー自身、そして消滅させられたポーランドが独立。
こうして第一次世界大戦が終結するころには当のオーストリアもはるかに領土を縮小して共和国となり、ハプスブルグの末えいは消滅した。
オーストリアは東欧唯一のドイツ人国家となった。そして貧しい国となった。ドイツ共和国との合邦も禁止されたからだ。
一方で二重帝国の片方の頭として他民族に君臨していたマジャール人の方は、周囲の国々の恨みを買った。かつての領土を新たに独立した国に奪われただけではない。彼らは弱ったマジャール人から、さらなる領土をかすめようと虎視眈々と狙っていた。
とくに二重帝国の重工業地帯が丸ごと独立したチェコスロバキアは、第一次世界大戦の落とし子である戦車を次々と生産し、東欧圏における陸軍強国となっていく。
1918年に共和国となったハンガリーだったが、翌年共産党がクーデターで政権を掌握。
第一次世界大戦は終結したが、ルーマニア人の住むトランシルバニアの奪還を目的として連合国側で参戦したルーマニアは、いまだ戦争を続けていた。相手はハンガリーだ。
そしてハンガリーは、ルーマニア、チェコスロバキア、ポーランドの三国から攻められたあげく全土を占領されてしまった。ルーマニアはトランシルバニアを得て矛を収める。
ハプスブルグ家の国王不在のまま二重帝国の海軍長官だったホルティが強引に摂政位について、ハンガリー王国が再度成立したのは1920年のことだった。(
ハンガリー=ルーマニア戦争の反省から軍事力の強化をホルティは目論んで独裁を強化するが、このときのハンガリーには食品などの軽工業しかなく、ほぼ農業国だった。
とくに重工業国であるチェコスロバキアには大きく水をあけられていた。なにしろチェコでは自前で最新兵器の「戦車」を生産していたのだから。
ハンガリーが無理を承知で戦車の国産化に突き進んだのは、そういう事情からだった。
しかし、完全国産にはどうしても至らなかった。
輸入するにも国庫は貧しく、イタリアからタンケッテのCV33やCV35を買うのがやっとだった。
当時はドイツでナチスが政権をすでに奪取しており、党首ヒトラーは大統領と
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