第15話 未成戦車のコンバット・プルーフ
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どうしたの?」
「――西住殿、皆さん、聞いて欲しいことがあります!」
優花里はいままで隠していたことまで泣きながら明かした。そして最後は号泣した。
みほと華がなだめている。アヒルさんチームはなんともいいようのない表情をした。
まほ、安斎、西の三人は顔を見あわせ嘆息している。ダージリンは珍しく黙っている。
「で、これからどうするの?」
こういうときに話を先に進めることができるのは、角谷だ。
むろんもう引退の身だから、差し出口はたたかない。
「もちろん、補助金なんか受け取らず、すべてを白紙に返すという方法もあります」
口に出してはそういうが、みほはもちろん不服だらけだ。
「でも、これには政局がまたからんでる。
下北タンクディストリビューションって、親会社の大間崎ホールディングともども『政商』っていうべき連中なの。だいたい『男』が戦車を商っている段階で真っ黒けでしょ?」
愛里寿の口調が実年齢ではなく、精神年齢相応のものに変わる。
「例のカール『自動』臼砲って、辻と連中が結託して作ったものなの。
リバースエンジニアリングや逆コンパイルどころか、中身は別物なのよ。
本物は車体の外に砲兵が18人いてやっと撃つことができる。
でもあれはフルオートで弾庫から砲弾を取り出し、自動ラマーが薬包を添えて装填するという、いつの時代のテクノロジーって代物。
連盟だって本来は認めるわけがない。でも理事長は認めた。
――だってあれ、制作費は全部島田家の持出しだから。認めるしかないでしょ。
お母様は弱り目に祟り目の西住流を潰す機会をうかがっていた。
そこに辻が介入しようとしたの。大洗動乱の1ヶ月前に。
西住みほと大学選抜隊の試合をセッティングして、もし可能なら姉の方も潰すから、そのための道具を用意するための資金をよこせって」
「ふん、やせているくせにやっぱりタヌキか。私に押されているように見せて、自分が望む方向に事態を持って行ったと」
そういう割に角谷は悔しそうではない。実際、辻にとって邪魔な人間をすべてまとめて叩き潰すのなら、一番いいやり口だ。ひとつ勉強になったとだけ思っている。
誤算があるとしたら、みほの側についた者が多すぎたことと、理事長が彼以上のタヌキで気が長い人間だったこと。現に戦車道連盟のサイトは辻の非を鳴らし、戦車道業界紙では辻が官製談合などの汚職に手を染めていると『思わせる』記事が載っていた。
ふふふ、タヌキばかりだ。おじさんたちもそうだが、この島田親子も、元ダージリンもねぇ。
そう思いながら角谷はまほの身を案じている。あんな直線的な思考で、魑魅魍魎がうじゃうじゃする利権だらけの世界でうまくやっていけるのかと。
いずれはメスダヌキ候補生
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