第14話 ショットトラップ
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スを防いでるんだ」
「砲塔だけじゃ追い切れない!」
「河西! 車体を常に奴に向けろ。秋山、補助ハンドル回せえ!」
「磯辺殿、陣地転換した方が良いですっ!」
「だめだ。こいつの貧弱な走りじゃスキができるだけだ」
西住家U号はブレーキと操向レバーを1本で兼ねているから「スローイン・ファーストアウト」を心がけなくても戦車の方でやってくれる。
タイトな峠道の下りなら1.6リッターのFF車について行けるまほが、日光いろは坂を登るようなライン取りで徐々にTasとの距離を詰めていく。
「パワースライドで一気に詰めるぞ。みほ、100切ったら教えろ」
U号はいままでの「グリップ走法」をやめ、急ブレーキ急リリース、アクセルベタ踏みで強引に向きかえと同時にダッシュをかける。ドリフトでもスピンターンでもない動き。
オーバーもアンダーも出していないのは同じだが、コーナー脱出速度が上がる。
「120、110、100! 今!」
みほが叫ぶのと同時にまほが右レバーをいっぱいに引き、アクセルをコンマ数秒かけてリリース、同時にクラッチを切った。
U号はクルマで言うブレーキターンで90度向きを変えてピタリと静止する。
20mm機関砲の軸線上に、Tasの正面がある。
「五十鈴、撃てっ!」
「はいっ!」
20発の20mm、PzGr.40想定の競技弾が、すべてTasの砲塔防循に吸い込まれていく。
「早まったでありますな! 止まったのが命取り」
優花里は勝利を確信した。20mm弾はことごとく砲塔防循、厚さ120mmの巨大カマボコに命中する。そんなものでは抜けはしない……
はずだった。
「?」
「何が起きたの?」
「発射ペダルが……」
「エンジン、止まりました」
「まさか!」
優花里はローダーズハッチから飛びだした。
判定装置からはまたも白旗が伸びている。
まさかまた砲塔と車体の継ぎ目を撃たれたのかと思い、優花里は防循下をのぞき込む。
「――! どういうこと……」
継ぎ目には1発も当たっていなかった。
しかし防循の下、乗員ハッチのある車体上面装甲に、20発中17発が貼りついていた。
上面装甲の厚さはわずか20mm……
「なぜ! いったいなぜなのですかああぁぁぁあ!」
優花里の絶叫が、U号に乗っているみほたちにまで聞こえてきた。
「君は、『ショットトラップ』という言葉は知っているか?」
戦車道の座学で使用する教室、定員割れで空き教室になっていたそこで、今日の関係者と安斎と西が集まって、ミーティングしていた。
いま話しているのは、西住まほだ。
「たとえば『かまぼこ型の防楯』には、確かにメリットもある
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