第13話 聖グロリアーナの選択
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する旨が書かれていた。つまり西住家の『物言い』は、やぶ蛇となったのだ。
ドイツのアニマルシリーズの優位性を確立するのが、しほの狙いだったのだろうが……。
他にも、動力系以外の仕様をM26同様にダウングレードしたM46も認められることになり、純正M26にもM46のクロスドライブおよび810馬力エンジンの搭載が認められた。
これらはM26の支援型であるM45戦車にむけて開発されたものだったからだ。
さらに旧ソ連戦車第一世代MBTのT-54に、規則適合の先行量産型が存在することまで発覚し、これで英、米、旧ソ陣営にも戦後第一世代レベルの戦車を使う道が開かれた。
連盟理事長はこれを要請を受けた形にして、世界大会委員会にも上程し、裁可されている。
要は、彼にとっても西住家だけが強くなることは望ましいことではないのだ。
「でも、それではウチのような貧乏校がいくら腕と戦術を磨いても、勝ちようがなくなってしまうではないですか!
──いや、まだあれが残っている!」
そう叫ぶなり、優花里はTasに向かって走り出した。
「見てください、西住殿。
砲塔と車体の合わせ目に競技弾が刺さっています。アンラッキーヒットです。
こんなことは狙ってできることではありません。Tasを戦力化できれば、強豪とも戦えます。
戦車道を私立巨大校だけのものにしてはなりません!
戦いましょう、西住殿。腕と戦術で!」
優花里は必死にみほをたきつけるものの、当のみほはしばらく無言のままだった。
別に悔しがっているわけでもなく、当惑しているわけでもなく、疲れているようにも見えず、さりとて考え込んでいるようでもない。
角谷は、急に5歳は年を取ったような顔をしており、華は華で、次に生ける花のことでも考えているみたいだ。
「西住殿!」
「……優花里さん。今度は私がその戦車と戦いましょう。
そのあとに、いまこの国を舞台に何が起こっているか話します。
予算のことも戦車道のことも、その後にしたい」
目を見開いたみほは、優花里がいままでに見たことがないほど、真剣なまなざしをしていた。
戦車道をやっていく過程で相当引っ込み思案を克服した優花里だったが、今日は全国大会以前に戻ったかのように、みほの目力の前に引き下がってしまった。
翌日、大洗女子学園艦は水戸港大洗港区を目指し、東京湾沖を出帆した。
聖グロリアーナ艦が取り舵を取って浦賀水道に向かわず、大洗艦のあとを付いてくる。
こうなるとさすがに優花里にも、これらの事態が連動していることに気がついた。
もしかしたら自分は、誰かに担がれているのではないかという疑念が湧いてきた。
だが、補助金とTasを返してしまって、どうなるというのか。
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