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大洗女子 第64回全国大会に出場せず
第12話 ルクリリの勝利
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ビューさせたという戦車ね。黒森峰が見た……』
「キャプテン、敵発砲! 当たります」
「やっぱりすばやいね。でもシャーマン75mm並みのが当たってもこいつなら……」
「ええ、当たっても大丈夫なんてアンツィオ以来ですね」
「練習以外で落ち着いて狙えるなんて、初めてです」
「命中します。ショックに備えてください」
「よし、あけび。構わず落ち着いて狙え」

 敵弾はハルダウン中で砲塔しか見えないはずの『新・アヒルさん』の、その砲塔に命中した。
 割れ鐘のような音が車内に響き渡る。

「よし、撃……
 ……なんだ?」
「照明消えます」
「エンジン停止!」
「発射ペダル、動きません!!」
「機能ロックだと!? まさか、今のが有効?」

 信じられない思いでハッチを開けて顔を出した磯辺の目に、無情に翻る白旗が映る。

「どういうことだ? パンターより堅いんだぞ、こいつは!」



『アヒルさんチーム、撃破されました! 申し訳ありません!』
「……」

 優花里は無線を聞いて呆然としている。
 アヒルさんチームに託したのは、大洗女子戦車道の今後を担うはずの期待の新戦力。
 44MTas重戦車……。
 搭乗するのは超旧式戦車「八九式中戦車」で全国大会を戦い抜いた「奇跡の」アヒル。
 それがなぜ格下の敵、足が速いだけのクロムウエルなどに撃破されたのか。

「なぜ、なぜこんなことに!」

 そう叫ぶ秋山のかたわらには、なぜか沈痛な面持ちの西住みほがいた。
 そしてたぶん、これだけでは終わらない。

『レオポンよりあんこう、後から敵です! 4両接近中』

 三原山の火口のなかよりも恐ろしい『地獄』が、これから始まろうとしていた。
 
 
 
 
 

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