第11話 笑う角谷
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「……ええ、まちがいなく」
みほは今の自分の知る限りのことと、思いつく限りのことをすべて角谷に話した。
角谷は、みほの推定は妥当なものと考える。ただ、角谷自身はいまだ戦車の目利きについては素人だ。だから武器の鑑定士と、自動車のエンジニア、そして機動戦のベテランにくわえて、西住流と真逆な戦車道を突き進む人間を呼んだ。
「でさ、ナカジマ。
あいつって『乗り物』としてはどうなの?」
「重い車重にプアなサス、ピーキーでもないのにトルクが出ないエンジン。
エンジンはスムーズに回ればめっけもの。
まさに壊れるために走っているようなもの。小さな超重戦車だよ。
ガタイがパンターよりデカい分、室内空間は良好だけど」
「で、西住ちゃん。『兵器』としては?」
「あの戦車は『昼飯の角度』も『ハルダウン』も、戦車壕に入れて砲塔だけ出しても、戦車自体がその効果をすべて打ち消してしまいます。
いいところ密林の中にでも隠して、狙撃に徹すればというところですが、それで倒せるのは良くて1両まで。おそらくフラッグ戦では迂回されるだけでしょう」
角谷も「やれやれ」という顔だ。超重戦車なんて味方の誰かが犠牲になれば確実に倒せると、決勝戦でも大洗動乱でも証明された。空襲や支援砲撃のない戦車道でさえ。
そしてこの「新型戦車」にははったりすらない。ベテラン戦車道選手ならどんな戦車に乗っていても、喜んで撃ってくるだろう。
最善は「フラッグ戦なら無視」すればいい。射程外を追いつけない速度で迂回すればいいだけのことだ。ノロマなら味方について行けず勝手に遊兵になる。
フラッグにしたら? それこそ相手の思うつぼだ。
大洗女子を全国大会で血まみれにしたい誰かは、はした金を与えてカタログスペックは立派なこの戦車を与えておけば自分から進んで蟻地獄に進んでくれると思っているようだが、角谷は自分自身も西住みほもそこまで間抜けじゃないと思っている。
そして、今度は大洗クラスの情けない戦車を率いて戦っていたポン友のご意見を聞く。
そのポン友、安斎千代美はバイヤーを介さずに、現地に乗り込んで直接戦車を購入してこられる人物だ。
「ちょび子ー、ハンガリーの戦車道ってどういう状況なの?」
「ちょび子と呼ぶな」
「でももう『ドゥーチェ』でもないでしょ」
「うっ……。
……まあそれはいい。向こうも日本の戦車道と大して変わらない。みんな輸入戦車だ。
一つだけ違いがあるとすれば、向こうには『知波単』はないな」
「ちょっとー! 安斎さん。それどういう意味ですか?」
安斎の台詞に、華ではない方の大食らいがかみついた。なにしろ自分の母校を名指しでディスられたと思ったから。
「私はほめているんだよ、西。
文化財としての国産戦車を後世に残す
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