第10話 怒りのみほ
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
卒業前の最後の一仕事ということで、ナカジマたち三年生総出でキャブ調整に取り組んだものの、結局丸1日をこれに費やすことになった。
彼女たちの仕事はショップレベルだったと言っていい。不整爆発寸前だった機関もなんとか回るようにはなった。
しかしキャブを完全に近く同調させるだけでは終わらず、燃料に無鉛アブガス添加剤を入れたうえ、オイルは固さはそれほどでもないが潤滑性能が高いシングルグレード鉱物油を探さなければならなかった。
現在使われている、季節の温度変化に対応できるマルチグレードや高性能の化学合成オイルは、オイルシールやエンジンの構造そのものが対応していないため漏れてしまうので使えない。
板バネについては既存品で対応できないことがわかったので、諦めるしかなかった。
それでもこいつの大重量はどうにもできず、整地で30km/hには結局届かずじまいだった。
優香里はチャーチルよりは少しだけ速い速度でなんとかテストランする新型を見て、動くだけマシよ。そのための重装甲と長射程砲なのだから。不整地は行かなければいいだけと、なんとか自分を納得させていた。
ただ、格闘戦が身上のみほは、おそらくこれに乗ろうとはいわないだろう。
研修会の日程が延伸したため、数日予定を超過したみほと華が大洗に帰還したのは、新型がとりあえず動くようになった次の日だった。
華は放課後にみほも加えて、自分が不在だった期間の事務引き継ぎを会長室で行うと携帯メールで優花香里に伝えた。華がいる普通T科と優香里の普通U科は、校舎が離れた場所にある。
すると優花里からは、『戦車倉庫から離れられないので』来て欲しいという。
みほと華は顔を見あわせた。折悪しく麻子は趣味の時間であり、沙織は……
「ゆかりんが業者に試乗用パンター借りたみたい」
という認識だった。これは別に彼女だけの話ではない。
「せんしゃずかん」にはこれどころか、ハンガリー戦車のページすらない。
ネトゲチームはパンターではないということはわかったが、ネトゲにはハンガリー戦車は(少なくともハンガリー国籍では)出てこないので、ハンガリー製戦車があること自体すら知らないままだった。
優花里と会ったうえで、その試乗車を見ない事には話が進まないと思った華とみほは、放課後になってから戦車倉庫にやってきた。
ところがその優花里はまだ来ていないようだ。戦車倉庫の照明が点いていない。
「戦車倉庫から離れられないっていうから来たのに。優花里さんどこにいったのかなあ」
「とりあえず照明をつけましょうか」
古い戦車倉庫の照明が最新のLEDであるはずもなく、旧式の水銀灯が何分もかけて徐々に光を放ち始める。
戦車倉庫には手前側に見慣れた8両の戦
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ