第10話 怒りのみほ
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て言ったことを、私が覚えていないとでも思っているのだろうか。「戦車道にまぐれはない。あるのは実力のみ」ですって?
どう考えても「まぐれ」の綱渡りでしかなかった私たちの優勝。
そんな、アリ同然の大洗女子であっても、自分のメンツを傷つけた以上踏みつぶさねば気が済まないとおっしゃるのですね。あなたという人は……
……みほはここで、ついに本気で戦う覚悟を決めた。
「……優花里さん、向こうの出してきた条件は?」
みほの声が、戦車倉庫の内部にうつろに響く。
一つの時代の終わりを告げる鐘のように。
違和感にとらわれた優花里だったが、毒を皿まで食べてしまった彼女の舌は、何も感じていないかのごとく回り続ける。
「メンバーは履修を終えた三年生も含める。グロリアーナ側は5両。
大洗側は出せる戦車はすべて出してよいとのことです。
試合日は、三月の第2日曜日を希望とのことです」
「場所はどこ?」
さすがに大洗町全域というのは、もう連盟が認めないだろう。
観光ホテルが2つガス爆発で大惨事だし、アクアワールドも半壊した。
どれだけ金が出ていったかわからない。
たしか新築したばかりのお店を木っ端微塵にされた人もいたはずである。
「伊豆大島の、三原山カルデラ全域だそうです」
華が思わずみほの方を見た。聖グロリアーナが何を考えているのかわかったからだ。
みほは目で「何も言わないで」と華を制し、ややあって口を開く。
「お受けします。こちらは『9両』でお相手します。
すぐに聖グロリアーナにそう伝えてください。私と華さんはここで角谷元会長と連絡を取ってから、自動車部に寄ってそのあとで会長室に行きます」
「はいっ! 了解であります」
みほの暗い表情から、新型の導入や対外試合自体反対されるのではないかと不安になっていた優花里は、それが杞憂に過ぎなかったと安堵し、はりきって生徒会室に戻った。
一方……。
「みほさん。よろしいのですか? 今のままでは……」
「優花里さんにとって、戦車道自体がマニアの趣味です。
だからいまここで何を言っても無駄でしょう。
レアなアイテムをゲットしたくらいの気持ちなのね。
実は、私にもこの戦車は何なのか全然わからない。
でも、練達の戦車道選手がこの戦車を見たら、たとえこの戦車がどこが作った何という戦車か全く知らなくても……」
みほは首を振って考えを切り替えると、自分のスマホを取り出して電話帳を開く。
「……とりあえず、角谷元会長に連絡しましょう。
あの人に働いてもらわなくてはいけません」
「ふふっ、ご本人はもう二度と働きたくないって思っていらっしゃいますね」
華が笑った。前に角谷が「働いた」ときは、大洗動乱が起きてし
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