第10話 怒りのみほ
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車がある。
これらはシルエットだけでも何なのか彼女たちにはすぐにわかる。
そして、無限軌道杯直前に河嶋桃が発掘した菱形戦車「マークW」の巨体も鎮座している。
戦車黎明期の縄文式土器を引き当てるとは、河嶋はさすがというか、やはりというか……
わからないのは入って来たドアから一番遠くにある、ひときわデカいシルエット。
「ポルシェティーガーよりも大きいですね。
みほさん、これは何という戦車なのですか?」
「わからない。こんなのは見たことがない。
明らかにパンターではないということぐらいしか……」
水銀灯が過熱され、ようやく本来の光量に達して、部屋の隅々まで光に満ちる。
そして新戦車の姿も、光の中にうかびあがった。
「あっ!!」
「みほさん? どうしたの……」
「……これでは」
華の目のまえのみほは、そう言ったきり口をぽかんとあけて呆然としている。
しばらくそのまま硬直していたみほだったが、その呪縛が解けたとたん、まるで言葉を絞り出すように言った……。
「これでは戦えない……」
「え?」
どういうことであろうか。
あの、整備もされずここで朽ち果てるのを待っていたかのような旧型W号D型を見て「これなら戦える」と言ったみほが、というか縄文式マークWにさえ何も言わなかったみほが戦えないとまで言うとは……。
それからしばらくして、戦車倉庫に直行するはずの優花里がやっと姿を現した。
「あ、もういらしていたのでありますか?
実は、急に聖グロリアーナから電話がありまして……」
みほは新型の前で呆然としたままであり、華だけが優花里の話を聞く形になった。
「聖グロリアーナ、ですか?」
「はい、受験シーズンが終わり次第、現選手団による最後の交流戦がしたいそうです。
……どうしますか?」
みほは、それを暗い表情のまま聞いていた。
姉から聞いた強豪校の状況。研修へ戻ってきたあと、急によそよそしくなった逸見。
匿名で多額、しかも条件付きの「ふるさと納税」。
突然売り込みをかけてきた、営業所長が男性だという戦車ディーラー。
そして、聖グロリアーナから突如申し込まれた交流戦。
このとき、みほにはすべてが一本の線でつながった……。
みほは、伏し目がちにゆっくりと優花里の方に向き直った。
無表情としか言いようのない顔をして。
このときのみほは、何かが永久に変わってしまったのを感じていた。
そしてこうも思っていた。
みんな踊りたければ勝手に踊るがいい。でも私まで舞台に上げて血まみれで踊らせたいのなら、もっと上手い方法を考えて欲しかった。
……まったく悲しい。本当に大人げない。
大洗動乱のとき「大洗女子を倒す」なん
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