第9話 新戦車運用開始
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「では、磯辺殿。よろしくお願いします」
角谷とナカジマが試乗車を検分した次の日の戦車道授業で、優花里はアヒルさんチームに試乗をしてもらうことにした。
アヒルさんのメンバーは4人。ハッチは車体側に2つ、砲塔にキューポラ付き含めて2つと、人数分のものがある。
ただ、八九と違い原産国が右側通行の国のため、ドライバーの河西とオペレーター兼ナビゲーターの近藤の配置が逆になる。
今日は「レオポンの四人」も、全員出てきている。履修生がわずか32人のため戦車道は学年別授業でないが、もう履修単位をとったものとして三年生は授業免除されている。
にもかかわらずナカジマ、スズキ、ホシノの3人が出てきているのは訳がある。
何かあったときの対応のためだ。これはクルマで言うならベンチャー企業が作った自動車のようなものだ。それが投げ売り同然の値段で売られていたなら「白いソアラ」でもないかぎり訳あり(もちろん白いソアラも訳ありではあるが)と彼女たちは考える。
イグニッションをONにすると、とりあえず普通に機関は始動した。
「でも、メカノイズは多いな」
アイドリングでも排気音以外のカチャカチャとか、不規則な金属音がかなり混じっている。主なものはロッカーアームが吸排気バルブを叩くときの「タペット音」だろうが、ギアノイズもW号などにくらべて大きいようだ。あまり気持ちの良いものではない。
ギアを二速にいれ、戦車はゆっくり戦車倉庫を出ていく。エンジンの吹け上がりがスムーズとは言えないとナカジマたちは思う。彼女たちが扱うものは古いものでもせいぜい1980年代までのエンジンだから比較するのが間違っているが、W号のマイバッハや、改造ヘッツアーのプラガエンジンと比べても雑っぽさがあるように思う。
ガンズ社は機関車メーカーだが、ヴァイス・マンフレートというメーカーは聞いたことがなかった。ナカジマがサービスマニュアル的な冊子を見る。
「エンジンはチェコのシェコダが作った戦車のライセンスを買って現地生産したものらしい。
シェコダがドイツに提案したけど不採用になった戦車のライセンスを購入して、シェコダの指導で国内生産した中型戦車のV8エンジンを双子にしているんだね。
……うーむ」
「どうしたんだ? ナカジマ」
ハンガリーは戦車の自国生産に執着していたが、重工業のレベルは当時の日本以下だったようで、国内で設計できるだけの力量がなく、イタリア、スウェーデン、チェコの戦車をライセンスして配備していた。0から設計したのはこの戦車が初めてであり、それもドイツにパンターのライセンスを要望したが断られたためにやむなく作ったものらしい。
縮小モックアップの写真が残されているが、あまりくわしくないものが見たら「へんてこなパンター」
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