第9話 新戦車運用開始
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車体にエンジンを載せたままで起動輪にダイナモつないで測ってるから、額面よりも低い結果になっている。どちらもギアは2速だ」
馬力曲線はどちらも毎分2,500回転あたりを頂点とする、なだらかな山形をしている。
トルク曲線は2,000回転あたりまでフラットで、そこから徐々に落ちている。
そしてどちらもパーシングの方が上回っている。
パーシングのエンジンの最高出力はエンジン単体で500馬力、こっちの方は280馬力×2だから起動輪の出力で負けているのは、それだけロスが多いと言うことだ。
トルクの方はさらに深刻で、大差がついているようにしか見えない。
「駆動力はまあ、大きなエンジン一つと小さなエンジン二つという形式の違いがはっきり出たね」
「……どういう、ことなんですか?」
駆動力は戦車を押す力で、馬力は質量×距離だから最高速度に関係する。
重い戦車にトルクの薄いエンジンを積んだら、のそのそとしか動けない。
戦車のエンジンは現在の常識からすればおそろしく低回転型であるから、トルクがない=馬力もない、と言うことでもある。
「フォードGAFもこいつのエンジンも、単体ならV型8気筒だ。
だが、排気量が違うし、出力なら半分しかない。
GAFの方が、ピストンの直径が倍近い。爆発力を受ける面積は4倍だ。
こいつのエンジンを16気筒の1基と考えても2倍だ。それがトルクの差になっている。
機動力を阻害している要素は、双子という変則レイアウト、トルクの薄さ、実際の重量、それとも関連するが、あと足回りの問題がある」
ナカジマは左右12組24個の転輪を支えるサスペンションを指さした。
「こんな重戦車といっていい車体に、リーフスプリングのボギーでは弱すぎる。
リーフスプリングは板ばね同士がこすれ合ってダンパーの効果もあるから、独立懸架が一般的になる以前、トラックの後輪サスに多用された。だが、バネとしての耐荷重や弾力ではトーションバーやコイルスプリング(コイルバネも本当は渦巻きトーションバー)に勝てない。
トーションバーは構造が簡単で耐荷重が強く、高速走行時にもへたらないで車体を支えられるから重量級戦車にはうってつけなんだけど、なんでこいつは板ばねなんだろうな。
昨日もへたりまくっていたよ」
「Toldi軽戦車ならトーションバーなんですが、スウェーデンからライセンス権を買ったものですから……」
ナカジマには、どうしてこんな事になったのか、これを聞いてやっと得心がいった。
つまり、ハンガリー王国の重工業はとても遅れていたということらしい。
図面に書かれているものを、そのとおりにしか作ることしかできないということだ。
イタリアより遅れていた日本よりさらに遅れている。チェコスロ
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