第9話 新戦車運用開始
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が使い物にならない。それだけじゃない。
サスペンションが明らかに車体に対して容量不足だ。
スウェーデンライセンス戦車のToldi軽戦車はトーションバーサスペンション。なのにこの戦車はリーフスプリングに先祖返りしている。しかも24輪ボギーだ。転輪ひと組が大径で、W号と同じような、というかそのまま大きくしたリーフスプリングボギー。
これよりはるかに軽量のW号でも、転輪は小さくしてボギーの組数を8組32輪にしている。これには「バネ下重量」というものが関係する。
つまりサスペンションの支点から先の重量、ほぼホイールの重量と一致する場合が多いが、これがサスの能力に比べて重いと、路面追従性と揺れを早期に収束させるダンピング能力に悪影響を与え、サスをへたりやすくする。
しかも走りが不安定なのは、機関とサスだけの話ではないようだ。
「秋山、あいつの戦闘重量は?」
「38トンであります」
「パンターのは?」
「45トンです」
「それぞれの車体正面装甲と車体長と全幅は?」
「えーと、パンターが傾斜80mm/6.9m/3.4m。
この戦車は傾斜120mm/7.1m/3.5mです……」
そろそろ優香里も何かが変だと気がついてきた。
作ってみたら設計見積もりより重量過大になることは、戦車の場合よくあることだ。
だがスペック上の数字からすれば、38トンというのは希望的観測過ぎる。
見積もり違いというレベルではない。
たとえば前面傾斜120mmの代表例はスターリン2だが、車体長6.8mの全幅3.1mで、パンターより小さいが、やはり45トンある。それにスターリンは全体の印象としては、パンターの方が重戦車に見えるというダウンサイジング戦車だ。
またパンターの開発コードはVK30、計画では30トンのつもりだったが、できたのは45トンの肥満中戦車。ティーガーTはVK45、計画では45トンだったができたのは57トンの相撲取り。
戦闘重量38トンの戦車と言えばM4の重装甲版、「ジャンボ」だが、車体長6.3mの全幅2.9mで二回り小さく、車体前面装甲も102mm傾斜だ。
つまり車体装甲がペラペラでもないかぎり、車重が38トンなどに収まるわけがない。
おまけにエンジン二つだ。
「どうも台貫とシャシーダイナモ(出力トルクをエンジンを外さない状態で測定する装置)にかけなきゃならないね」
ナカジマは、カタログスペックが「計画値」なのだと理解して「実測」するつもりのようだ。
優香里にもこの時点で機動性に難のある戦車だろうとはわかってきた。
おそらく路上速度も設計目標の45km/hには届かないに違いない。
ケーニクスティーガーやヤークトティーガーと同じように。
「でも、ポルシェティーガーもエン
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