第9話 新戦車運用開始
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だと思うかも知れない。
機関室が全長の半分ほどを占めているが、別にソ連の戦車のようなデカいエンジンを積んでいるわけではない。ヴァイス・マンフレートV-8Hを2基、双子レイアウトにしているのだ。昨日のナカジマの懸念はこの部分と足回りにあった。
液冷V型双子エンジンが鬼門だと言うことは、飛行機のことはちんぷんかんぷんのナカジマが知るよしもなかったが、2つの小型エンジンをひっつけてギアボックスハウジングで一軸にするなんて、ポルシェティーガー以上にやばいんじゃないかと危惧したのだ。
『振動がひどいな』
磯辺からはさっそく、あまり好ましくない報告が上がってくる。
たぶん左右のエンジン回転数の同調が取れていないのではないかとナカジマは思う。
それでは互いのエンジンの出力を合わせるハウジングギアに無理がかかる。
回転自体もギクシャクするのではないか。おそらく計画どおりの出力がでないだろう。
「ミッションとステアリングは?」
『おそらくW号と同じタイプと思われます。ミッションは……、普段からシンクロ無しのつもりでダブルクラッチしてますから違いはわかりません』
河西は普段から変速機にシンクロメッシュがない原始時代の機関相手に、それが当たり前であるかのように「ダブルクラッチ+ヒール&トゥ」というほとんど無形文化財クラスの技を駆使している人間国宝だ。だからミッションの形式は問わないが、問題はそこではなかった。
『あっ! シフトアップするとエンジンがストール気味になります』
「二速で思い切り引っ張ってみろ」
『アクセルに回転が付いてきません。エンジンが咳き込みます』
おそらく最高トルクがでる回転まで回せないのだろう。同調の問題で。
ナカジマの懸念はこのあとも実現していく。
『寒いのに水温計が上がり気味です。もう80℃にとどきます』
並列エンジンの冷却の問題はポルシェティーガーでも経験しているが、これはエレファント重突撃砲で、戦時中に対策が取られている。
たがこの戦車は実戦で使われたことがない。試作車台が工場ごと米軍の空襲で粉砕されている。
これから先、どんな問題が起こるかわからない。
というかこれから大洗女子がテストするようなものだ。
よそですでに不具合の洗い出しがすんでいるなら、初走行でこんな事にはならない。
ガンズ社は自社で戦車の設計をしたことはなく、戦車製作では渡された設計図書どおりに作って納品する下請けがもっぱらだったという。そして今はなきヴァイス・マンフレート社も、ゼロからの設計はこれが初めてだ。それまではチェコやスウェーデンの設計した戦車を自国仕様に改修したことしかないのだ。
「つまり、テストドライブもされていない試作機だというのか?」
おそらく駆動系
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