第8話 試用期間
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ーガーをまともに走らせたということは、マウスをまともに戦わせることができた西住家のファクトリーに匹敵するレベルであり、そんなのがなぜぽっと出の大洗女子にと大いに話題になっている。
だからナカジマが例の戦車を見るとすれば、それは当然「乗り物としてものになるか」を診断したいということに他ならない。
「……」
戦車倉庫においてある、例の重戦車をいろいろな角度で検分したナカジマだが、長すぎるエンジンルームのハッチを開けたときは、なにやら曇った表情をした。
しかしそれは一瞬のことで、すべてを見終わったナカジマはこともなげに言う。
「明日にでも『アヒルさん』に乗ってみてもらいなよ。それですべてわかる」
「アヒルさん」というのは本来はバレーボールの選手たちだ。
本年度当初に部員がたった4人になったためにバレー部が角谷に解散させられたときの、その4人のことである。バレー部復活を掲げて全国大会を戦った。
このチームはいまでは「奇跡の」という枕詞が付く。
大戦のころの日本戦車といえば「ブリキの棺桶」「世界最悪の操縦システム」で名高いが、彼女たちの乗った戦車は「八九式中戦車甲型」というまさに始祖である。
当然ブリキ度も、操縦困難な度合いも戦車道最悪といってもいいだろう。
しかもその主砲で倒せる相手は、さらに貧弱な豆戦車だけだ。
だが、彼女たちはその悲惨としかいいようのない戦車を駆って、全国大会の決勝まで堂々と戦い、八九式は大洗女子の中で最後に撃破された戦車になった。
その相手、黒森峰は八九式よりも新しいはずの日本戦車、九七式などを主力とする知波単学園をほぼ瞬殺しているにもかかわらずだ。
アヒルの最後の戦いは、レオポンの立ち往生同様に壮絶なものだった。
やはりケーニクスティーガーやパンターを引きつれて陽動をつとめ、十分引き離すまでの間縦横無尽に走り続けて1発の被弾も許さなかったのだ。
チームのドライバー河西は「午後からの天才」麻子にはかなわないが、高校トップクラスの腕だと噂される。
なにしろアヒルさんは、安斎千代美率いるアンツィオの、同様に腕がいいので撃破困難な豆戦車CV33軍団を追い回したあげく、5両も撃破している。
みほの持論である「腕と戦術」の、特に「腕」の方を体現するチームだ。
角谷には初めから「天の時」が味方していたと言ってもいいかも知れない。
大洗女子戦車道は、角谷本人も含めて誰が欠けても「大洗の奇跡」を起こすことができなかったというべきだろう。出落ちのアリクイも含めて。
いや、彼女たちは実際は騎士十字章や殊勲十字章なみの貢献をしている。
その「幸運」で。
だから角谷は、よく知っていたと言うべきかも知れない。
大洗女子の限界を。天の時はすでに去りつつあると言
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ