第8話 試用期間
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北富士に戻ってきたみほと華は、高校生組の中で逸見だけがまだ戻ってきていないことに気がついた。
あとは卒業式で首席として総代を務めること以外、黒森峰女学園での役割はないまほが二人を手招きする。彼女たちは昼食を同じテーブルで食べることになった。
あえてすみの方、誰にも注目されない席に着いた三人は、しばらく無言で昼食を摂る。
初めて華のメガイーターぶりを間近で観察したまほは、どうして華道にそれほどのカロリーが必要なのかと困惑している。
そして食事もおおかた終わり、周囲に人の姿もまばらになったころ、まほが口を開く。
「逸見がいないいまだから話せるが、これから話すことはあいつには内緒だ。
お前たちの方で何かおかしなことはないか?
……どうも熊本で母が私にも内密で、逸見と直接何かを話し合っているようだ」
みほは表情だけで驚き、華の顔から笑みが消える。
みほたちは初めて大洗で起きている奇妙な寄付金騒ぎと、それと合わせたように唐突に出現した、下北タンクディストリビューション北関東の営業所長のことを話す。
そしてまほは、いまの高校戦車道強豪校で何が起こっているのかを明かした。
三人の中で疑惑は徐々に確信になりつつあった。
そして同じころ。
「なんだあ。この戦車」
「わー、大きいね」
「これを買うんですか?」
昼休みの大洗女子では原野が持って来させた戦車の前で、優花里は得意満面である。
戦車は、故障した自動車をウインチで牽引して荷台に載せるトラックを大きくしたような、特殊なトレーラーに乗せられ、破損防止のための梱包資材が付いたままの状態だ。
「ねえ、ねこにゃーさん、これ見たことないなりね」
「うん、僕も見たことない」
「パンターのバッタもんだっちゃ」
世界中にサーバーがあって、数億人がプレイしているという戦車ネトゲの中毒患者であるアリクイの誰もがこれを見たことがないという。
「えー、皆さん。
これはこちらの下北タンクディストリビューションの北関東営業所長の原野さんが、特に大洗女子に使っていただきたいとご持参になった戦車です。
名前は……」
「まあちょっとお持ちください。この場でどなたか上手な操縦者の方に乗っていただきたいと思います」
テンションノリノリの優花里を押しとどめたのは、以外にも原野だった。
「ハーマンはすでに満タンにしてあります。試乗期間は1ヶ月を予定してありますが、乗っていただければすぐに良いものとわかっていただけます」
「うーん、上手な方でありますか。
では冷泉殿、お乗りになってくださいますか?」
優花里にそう勧められた冷泉麻子は、黙ったままその三色迷彩の戦車のエンジンルーム
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