第7話 新たな戦車
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る。
原野は、営業スマイルの裏でほくそ笑んでいる。
これなら大丈夫だろう。自分の代わりに営業マンになって必死に売り込んでくれる。
どのみち会長も隊長も、のどから手が出るほど戦力を欲しがっているにちがいない。
商談は成立したも同然だな。
原野は一切顔に出さずにそう思って、また金ぴかのブラジル製軽量ビジネスジェットの機上の人になった。
みほと華が学年末試験のため講習を数日間欠講して大洗女子に戻ってきたのは、原野が優花里と商談した2日後のことだった。
なお時を同じくして、逸見エリカも同じ理由で黒森峰女学園に一時帰還している。
「優花里さん。町の教育委員会からうちの戦車道に補助金が出るの?」
華もみほも、戦車道を3単位から1単位に縮小して、厳しい財政下でできることをやるしかないだろうと考えており、それに優花里がどう反応するか憂慮していたので、それが少なくとも次年度は解決すると聞き、安堵半分、不安が半分という微妙な心理になっている。
これがもし同窓会や町の有志による自発的な寄付であるなら、ありがたく使わせてもらうところだが、一個人、しかも匿名の人物が多額の現金を寄贈したというのには不安を覚える。しかも大洗女子に直接ではなく、町教委を介してだ。
善意に取ればお互いに気を使わないようにして受け取りやすくするため、悪意に取れば決して身元が彼女たちにもれてはならない人物からの思惑ありげなお金。
もし優花里が、寄贈者は直接連盟理事長の個人電話に変調装置付きの通話を仕掛けてくる怪人物だと明かしてしまったなら、華とみほは町役場に出向いて寄贈者に返納してくれるよう依頼してくるだろう。
優花里は、あんこうチームの信頼関係にのっとるなら、すべてを明かすべきだというのはわかっていた。だが、彼女は大洗女子を戦車道の不動の強豪にしたいという気持ちを押さえることはできなかった。
あとになれば、きっとわかってくれる。すべては大洗女子のためと理解してくれる。
そう思って、仲間たちに対する背徳感をねじ伏せる優花里。
彼女は原野のことも「戦車を試乗用に持ち込みたい」とだけ言う営業マンとだけ伝えている。
みほに現時点で詳細を伝えると、断るよう言われるかもしれないと思うからだ。
みほはどこまでも戦車道選手であって、優花里のように戦車自体にエンスー的興味はないことはよくわかっている。戦車の種類で言うなら優花里の方がよほど該博だ。
信頼するみほにこんな腹芸めいたマネをするのは気がとがめるが、これもすべて大洗女子戦車道の栄光の礎を築くため、と自分に言い聞かせる優花里。
しかし、彼女に腹芸は無理だった。まして相手は(ダージリンという例外はいるが)敵に決して自分の考えを読ませることはない西住みほと、平常心の怪物というべき
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