第6話 招かれざる客人
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
とえば、昨年西住家と学校法人黒森峰女学園は、戦車を刷新するためだけで7〜80億円、決勝戦まで使用した砲弾に2億円以上を支出したそうですな」
「砲弾だけで2億円!」
「もちろん校内演習用を含めての話でしょうが、128mm砲弾や長砲身88mm用の砲弾はラインがありませんでしたからね。ラインメタル社の特注品だとか。
うちでも扱っておりません。パンター用や17ポンド用の競技弾なら在庫がまだありますが、それでも1発30万円はいただきませんとね」
黒森峰並みの戦力を整えるとしたら、匿名の怪しい人物が援助してくれる資金は、砲弾代だけで消えてしまう。
大洗はすべて故障覚悟の「リサイクル砲弾」で戦ったが、決勝戦前に各方面からの義援金がなければ、実は「弾切れ」を覚悟しなければならなかった。
玉数がないドイツ戦車の復刻版が1両数億円というのはわかったが、マスプロ大国アメリカにも「アニマルシリーズ」に対抗できる戦車はある。それはどうなのか?
「では、大学選抜が使用したM26パーシングあたりはどのくらいするのでしょうか?」
「あれは戦車道ルールが現在の形になった時点で、まだ現役のものがかなりありました。
それだけでなくM46に改造されたものも機関がM45支援戦車用に製造されたもので、M45が終戦のため少数生産にとどまり、搭載されなかったというだけですので、それ以外の改造部分を元に戻したものもM26あつかいになって処分をまぬがれたため、玉数はかなりありました。
しかし……」
「しかし?」
ゼロから作るのでなければ、絶望的なプライスタグはつかないだろうと優香里は期待した。
しかしそれは一瞬で裏切られる。
「ドンガラとエンジンがあるからといって、すぐに競技で使えるというわけではありません。
まず、戦車道仕様に改造する必要があります。
ご存じのとおり戦車道の保安基準はとても厳格です。
最初に戦闘室をすべて連盟指定の防護剤で内張りしなくてはなりません。
加えて車体各所に衝撃波インピーダンス測定センサーと解析シミュレーターに演算装置、競技弾が発する信号を正確に受信するセンサー装置、それらをつなぐ特注のケーブル等々を配置します。
これら撃破判定モジュールと連動して武装と機関の機能を止めるターミネーターも必要です。
それらを連盟から購入しなければなりませんし、組み付けるためには車体と砲塔それぞれを分解しなければなりません。
工賃込みでまあ、ざっとこんなものです」
原野が電卓代わりにスマホを使って試算した見積金額は、ゆうに中古のマンション1区画が購入できる金額だった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ