第6話 招かれざる客人
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優花里は考える。
もうこれで後戻りはできない。
しかし、全国大会を連覇するためには、現状の戦力では無理。
どうすればいい……、そう優花里が迷っていたときだった。
「失礼します」
会長室のドアが開き、一年生の役員がメールの打ち出しらしいプリントアウトを持ってきた。
1通は当然大洗町教委からの書面一式だったが、もう1通のメールには全く心当たりがない。
優花里はメールの送り主を見た。
「原野慎之介……?」
それは、重機械商社の大間崎ホールディングスの一部門で戦車道用品、部品、戦車道仕様車両のディーラーである下北タンクディストリビューション株式会社北関東営業所長を名乗る人物からのメールだった。
来歴証明付きの実車、認証付き復刻版戦車、武装ASSY、機関各種、足回りの再生、装甲板板金、耐候性塗装、補給部品、法定検査、トータルアシスト請負を謳っている。
こういった会社は、ふだんは主に陸自車両関係の補給部品、消耗品、委託修理までを業務としており、戦車道関係の取引高はそれほどのものではない。
内容は、新規に戦車道を始められた団体様限定でお買い得品をお勧めするというもので、むろん販路拡大をねらってのDMだろうと思われる。
「いくらお買い得でも、補助金もらっても来年いっぱいしか活動できない大洗に……」
戦車なんか買えない。といおうとした優花里だったが、話を聞くだけならタダだと思いなおした。
大洗の戦力では相手が昨年までのような舐めプレイをしてくれなければ勝てないということが、優花里をさいなんでいた。
優花里は「話を聞くくらいなら」程度のニュアンスの返信を送った。
すると相手から今度は電話がかかってきた。
「本当にお話を聞かせていただくだけになるかもしれませんが」
たじろぎながら返答する優花里に原野は、もしかしたらご要望にお応えできるかもしれないからとアポイントを迫る。
結局、優花里は原野の勢いに押される形で翌日放課後の面談を約束させられてしまい、電話を切ったあと「早まったかも知れない」と、今度は不安にさいなまれる。
「ふーむ。お宅の戦力で四強のうち三校を撃破したということ自体が、奇跡ですね」
金色に塗ったエンブラエル フェノム100というビジネスジェットで大洗艦に現れた原野は、去年がどうかしていたのだと論評する。もしこれが夏の合同交流戦以前だったならば優花里も「戦車道にまぐれはない」と言い切るところだろうが、さすがにいまはそれを認めるしかない。
「クライスラーやフォード、BAEシステムズ、チェリャビンスクトラクター工場、ウラル貨車工場、ルノー、ラインメタルと言った会社が大戦終了までの戦車の復刻版を生産していますが、一流の戦車は現用よりも高価です。た
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