第6話 招かれざる客人
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り、欄間には横長の額に雄渾な筆致の書が飾られている。
しかし、それらに書かれているのは成語や漢詩の一節などではなく、ややファナティックな戦車道のスローガン。
座卓にかけているのは、近寄りがたい雰囲気をまとった女性がひとりだけ。他には誰もいない。
「大洗女子には何があろうと出てきてもらわねばならん。
奴らを仕留めるのは我等でなければならない。そのために救ってやったのだからな」
部屋の主はそうつぶやくと、携帯のマイクから変調装置を外した……。
「ふう……」
理事長は一人になると、ため息をついてからいつもの羽織姿に戻る。
彼が着がえを終えたころ、机に置いておいた携帯がまた鈴虫の声を奏でる。
面倒なことと思いながら、彼は携帯を取った。
それは、優花里に電話してきた人物と真っ向対立している人物からの電話だった。
理事長は「ちょっと失礼」というと水なしで飲めるチュアブルの胃薬を服用した。
今日は、帰りにどこかで一杯は無理だろうと、彼は思った。
それから3日後。
『副会長、外線です。
大洗町教委、学校教育課からです』
「つなぎなさい。
……はい、大洗女子学園会長職務代理者、秋山優花里です」
くだんの怪電話の主は、どうやら約束を守ったらしい。
大洗町まちづくり推進課に2億円の「ふるさと納税」が振り込まれてきたという。
ただ、大洗女子戦車道チームのファンと名乗るその人物は、その全額を大洗女子に補助金として概算払いで給付するよう求めてきた。
『ちょうど議会の定例会のさなかですので、次年度予算の追加議案として、歳入と歳出をそれぞれ2億円増額することでまちづくり推進課とは協議が整いました。
定例会の最終日に提出されますが、即日で可決されると思われます。
ですので、4月1日付の補助金申請書、事業計画書、収支予算書を議会の最終日の翌日、3月20日までにご用意するようお願いします。
ただ、補助事業が全国高校生大会への参加とするよう求められていますので、事業計画は全国大会参加にむけての計画としていただきます。
不参加であれば返還請求をなさると先方はいっておられます』
町教委担当者の伝達事項は、怪電話の内容そのままだった。
どうするべきだろうか。
折悪しく華とみほは、富士の六合目で雪洞にこもっている最中。
話を進めておいて、あとで納得してもらうしか方法がなさそうだ。
「わかりました、申請書の様式を送ってください。
こちらでもしかるべく進めますので」
『そちらにはメールですでに送ってありますので、ご確認ください。
期日を守っていただければ、4月中旬には支出できます』
受話器を置きながら、
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