第4話 戦車道連盟本部
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人物であり、監督省庁の文科省で絶大な権勢を握っていた学園艦教育局長を追い落とす準備におこたりなかったからでもあった。うがった見方をすれば。彼は無能を演じながら、自分と連盟が利益だけを得られるよう立ち回ったのかもしれない。
(もっとも女性ばかりの場所で全く問題を起こさない程度には、清廉な人物のようだ)
いま、鉄格子の中で未決囚となっている元局長は信じないだろうが。
秋山優花里は、別にその時の角谷のような政治的工作を企ててこの場に足を運んだわけではなかった。
彼女はまったく正直なことに、大洗女子が2012年度全国大会優勝校であると言うことだけを材料に、連盟からの援助を得ようとしてやって来たのである。
10分ほどして席に着いた関東方面団体助成担当の主任は、すでにメールで送られてきた見積もり一式をテーブルの上に広げ、優花里から一通りの説明を聞いたあと、難しい表情のまま思考を巡らしている。
「あの、何とかご考慮いただけないでしょうか」
優花里はおずおずとたずねた。
元々の性格は引っ込み思案で、戦車のこととなると人が変わったように積極的になるが、本来は対人交渉は大の苦手なのだ。
それでも彼女は大洗女子戦車道の未来のため、清水の舞台から飛び降りる覚悟でここに乗りこんできたのだった。
しかし、自分の提示した金額の莫大さに、彼女はいまさらながらおそれ多いという気持ちになっている。
(優花里、しっかりしろ。ここが正念場よ)
内心で自分を叱咤激励しなければ、足が震えてきそうだ。
それを見透かしたかのように、担当主任が口を開く。
「まず、1校でこれだけの助成を要求されたことはありません。
とくに戦車購入費まで支援してほしいとか、前代未聞です。
自ら資金を集めて試合に臨む他の高校に、納得できる説明はできません。
我々はすべての戦車道団体に対して公平である義務があります。
貴校の戦力増強だけに手を貸すことなど、不可能です」
理路整然と押してくる担当者の前に、優花里は折れそうになる。
しかしここで押し負けたら、西住みほを宣揚する途がたたれてしまう。
「……無理は承知でお願いしております。
しかし、昨年の全国大会で大洗女子があげた勝利はご存じでしょう。
我が校ながら、よくぞあれだけ貧弱な戦車隊で、四強のうち三校まで撃破できたものと思っています。
我が校は「戦車道は戦車の性能だけがすべてではない」と証明しました。
そのことには自負を持っています。
それを成し遂げた戦車道隊長、西住みほに今一度機会をください。
彼女の編み出した「腕と戦術」の戦車道を後世に伝えるために、ご助力をお願いいたします」
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