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大洗女子 第64回全国大会に出場せず
第4話 戦車道連盟本部
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ろう。

(ああ、資金。資金さえあればそれを財源にして……。
 そうだ!)

 優花里は自分のPCのドキュメントライブラリから、先に提出しようとした「無茶な」予算案を引っ張り出した。

(3両では戦力にならないであります。倍の6両にします。
 購入費見積もりは、「タンクル」で検索した相場を。
 これならもしパンターが買えなくても、シャーマン短砲身なら12両買えます。
 西住殿の戦車道なら、数がそろえば十分全国連覇が狙える。
 そうすれば大洗女子戦車道は盤石です。
 需用費は最低20会戦分として……)

 こうして戦車道費の見積もりは天井知らずとなり、無茶をとおりこして無謀と化した。
 秋山優花里の暴走がここに始まった。



 決裂に終わった学園予算会議のちょうど一週間後。
 優花里は「出張するところがある」とだけ担当教師や執行部役員に伝えて、水戸駅から東京方面に向かった。

 その日の昼過ぎ。
 優花里が訪問したのは広壮な敷地に歴史のある建物群が立ち並ぶ、ここが東京都下であることを忘れさせるような場所だった。
 しかしここは、大洗動乱の時水面下での交渉と策略が飛び交った場所、日本戦車道連盟総本部。その経理部出納課に、優花里は通されている。



「昨日メールでお約束をいただいた大洗女子学園生徒会副会長、秋山優花里であります」
「遠路お疲れ様です。そちらにおかけください。
 いま担当主任が参りますので、しばらくおまちください」

 窓口で応対した女性職員は、優花里を課内の簡易応接セットに案内した。
 優花里は客側のソファーに、姿勢を正して座った。
 よく見ると、事務職の職場であるのに、男性の姿がまったくない。
 出納課長も年配の女性だ。
 連盟理事長が男性なのは戦車道経歴と無関係で、政官財の大物との顔つなぎだというのは本当のようだ。連盟と各流派や各種団体は包括被包括の関係にはなく、連盟自体が戦車道と外部の窓口であると同時に内部の利害関係調整役であるというところだろうか。
 あとは、拠出金の中立的運用も所掌している。ゆえに連盟は中立でなければならない。
 そして他の芸事と違って、保有運用する資金が政治的利権にまでかかわるような戦車道では、理事長に各流派と無関係な人物を据えなければ本当に血の雨が降りかねない。
 とくに西住流と島田流をそれぞれ頂点に、戦車道界が東西で分裂抗争しているかの様相を呈しているならなおさらだろう。そういう意味では男性の有力者を外部から招聘するというのは理にかなっている。つまり男性理事長は、妥協の産物と言うことだろう。
 それ以外では、男性で戦車に関わる人間はこの世界にはいない。
 大洗動乱が迅速に解決を見たのも、理事長が表に見せている顔とは違って実際は老獪な
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