第3話 怪物と戦うには……
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大荒れに荒れた予算委員会の数日後。
華は会長職務代理者として優花里を指名して、連盟主催のこの合宿に参加した。
優花里はいたって快活に「はい、お任せください」と答えて彼女らを見送った。
優花里が快活なのは普段どおりなのだが、あんな風に予算で他の生徒たちと激突して、孤立無援状態になったあとであるからこそ、みほも華も不安を感じている。
「あら、こんなところにいたの」
みほと華がMREを食べ終え、容器類を同伴の雪上車が持ってきたダストボックスに捨てたところに、肩までのボブカットの研修生が声をかけてきた。
みほといろいろと因縁があり、先だっての全国大会決勝戦で雌雄を決した黒森峰女学園の現隊長、逸見エリカだった。みほの実姉で先代の黒森峰隊長、西住まほもいる。
まほは昨年暮れから卒業後の進路であるドイツ陸軍の戦車の聖地、ニーダーザクセン州ムンスター市にあるニーダーザクセン戦術大学へ留学準備のために学生見習いとして単身渡独しているところだったが、向こうでの準備がひととおり終わったので、黒森峰の卒業式に総代として出席するために一時帰国している。
あとは卒業式以外予定は何もないので、この研修にも参加している。。
この二人とみほの間には「ある事件」をめぐって、みほが黒森峰から大洗女子に転校しなくてはならないほどの因縁があって、一時は断絶状態にあったのだが、大洗動乱と呼ばれる高校生連合対大学戦車道選抜軍との戦いを通じて、いまは互いに和解している。
「お姉ちゃん、ドイツでの一人ぐらし、いろいろ大変でしょ」
「まあ言葉と習慣がな。
お前も息災そうで、何よりだ」
まほはみほと違って、初めからただ者ではない厳つい雰囲気をまとっている。
以前は「殺気」と形容しても良いくらいだったが、いまは妹を見る姉の目をしている。
家元後継者という立場は華と同じだが、華道と戦車道の差がその所作のちがいとなって現れているといっていいだろう。
もっとも、五十鈴華も本質は「求道者」であり、道のためには母と義絶するのもいとわない戦闘的な一面を持っている。
一門を率いるということには、それだけの覚悟が必要だ。
華を生けるのも砲弾を撃つのも、ともに「一発勝負」である。
そういう意味で華は、みほの姉であるこの人物の考えを理解している。
だから心の中だけでは、あいかわらず不器用なご姉妹ですね。と思っている。
「次年度の全国大会で当たったときは覚悟するのね。
断じて勝たせてあげないわよ」
逸見はみほに隔意があったころは、揶揄するような言動で挑発することも多かったが、これは揶揄でも挑発でもなかった。真剣なのだ。
「次年度に向けてW号ラングはすべて入れ替えたわ。
あれは戦車購入資金がショ
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