第2話 ボタンの掛け違い
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学園予算会議は、華の予想以上に荒れることになった。
体育会、文化部、図書館、学園艦施設の各運営協議会が真っ先に要求したのは、戦車道授業の縮小および段階的な廃止だった。
「本年度で戦車道授業は、昨年度以前の体育会各部の運営及び遠征予算の5年分をすでに費消していることをご存じですか?」
体育会を代表しているらしいマッシブな女生徒が、低い声で指摘する。
「戦車のメンテナンスと改造を含むアップデートを担当した自動車部でも、以前の部費の10倍以上を戦車道につぎ込んでおり、工学科の実技も半分以上休止した」
これは工学科の生徒、自動車部のスズキのような日焼け肌だ。
「本年度の高等部三年生は、最後の一年をただ練習のみに費やして終わった」
「戦車道授業の履修者30名程度のために、他の生徒が何もできなかったに等しい」
芸術関係の部活の部長会長と、図書館運営委員長がたたみかける。
「廃校廃艦という非常事態は去った以上、予算枠はいままでどおりに戻して欲しいです」
文化同好会の代表らしい、背の低い気弱そうな眼鏡っ娘が、それでも必死に訴える。
「戦車道授業を特例的な3単位から他の科目と同じく1単位に縮減し、履修生の人数に応じて予算も縮減することを望みます」
「大洗女子における戦車道の役割は終了した。授業自体の廃止も検討すべきです」
あとからあとから、生徒の代表者たちは執行部に詰め寄っていく。
誰もかれもが、戦車道を目の仇にしているように優花里には思えた。
大洗女子は、20年前に財政的理由のため戦車道をやめている。
20年後の現在は、さらに生徒数も減り、学校全体の予算も縮小している。
そのために誰もが我慢を強いられていた。
前任者角谷が「非常事態である」として強権をふるったこともある。
本年度限り、危機が去るまでの間として皆に理不尽なまでの忍従を強いたのだ。
しかし優花里にとっては戦車道の復活のみならず、大洗女子を戦車道強豪校にして西住みほの「腕と戦術」の戦車道を後世に伝えることが、副会長たる自分の使命と確信していた。
「皆、考えてください!
この学校が存続し、皆がまたこの学校で活動できるのは、何のおかげなのか。
ひとえに西住みほ率いる大洗戦車道のおかげではないか。
もはや戦車道あっての大洗であるといってもいい。
全国大会に出場するだけでも、当年度ベースの予算が必要です。
連覇を目指すなら、さらなる履修生の増員と、戦車の増加が必要です!
戦車道をなくせば、今度こそ大洗女子は消えてなくなるのです」
優花里の主張は、白眼視をもって迎えられた。
この先まだ戦車道を続けようというのなら、言いたいことはいくらでもあ
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