第2話 ボタンの掛け違い
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「議事進行のため、皆さん静粛に願います」
華が開会宣言以来、初めて口を開いた。
華は会長だが、同時に戦車道側の人間でもある。
だからこそ、あえて冷徹にふるまう必要を感じている。
「当分の間、会議を休会にしたいと思います。
いまの状態ではこの場で予算を成立させるのは無理でしょう。
各代表はいましばらく、予算要求を練り直す必要があると考えます。
次回の会議の開催日は、3月上旬にしたいと思います」
華は会議の解散と休会を宣した。やむをえないことであった。
ここで棚上げにしないと優花里が押し切られ、そして執行部自体の信任すら問われる事態になるかも知れない。優花里を選任したのは会長の華だ。
実は華自身も、どう乗り切ればいいのかわからない。
戦車道をまた終わらせたくはない。しかし、皆の言い分も正しいのだ。
「私は去年バレー部が廃止されているから、部活の連中がなにもできない悔しさはよくわかる。
あんたは言い過ぎだ」
戦車道授業用に指定されている教室の一角で、みほ、優花里、磯辺、カエサル、澤の五人が顔を合わせている。
磯辺は言葉ほど怒っているわけではない。しかしあの場での優花里の発言はもはや暴言であり、戦車道の立場と生徒会執行部の信頼を失わせるものなのはまちがいない。
「優花里さんの気持ちもわかるけど……」
みほにはなんと言って良いのかわからなかった。
本年度の戦車道優遇は、確かに度を超していた。
それでも今日のようなことにならなかったのは、角谷に寄せられていた信頼ゆえだったと言って良いのだろう。
戦車を維持して動かすというのは確かに大変だ。現用でさえ動かせばどこかが壊れるといっていい。まして戦車道で使うのは70年も前の、機械としてはるかに未熟な戦車だ。
そして大洗女子がひっくり返りかねないほどの費用をつぎ込んでも、作ることができたのは二線級以下のリサイクル戦車8両の戦車隊だ。いまは戦車の数に入れられないのも1両いるが。
聖グロ、サンダースほどの一線戦車の1個大隊をそろえ、維持し、戦うには大洗女子から見れば天文学的数字の金額が必要だ。そしておそらく西住家の個人資産と流派の資産すべてをつぎ込んだような現在の黒森峰戦車隊には、対抗しようと考えるのすら愚かしい。
また、今日の発言にもあったが、相手が四強であれば油断しない限り大洗が勝てないと言うのもかぎりなく真実に近い。
夏休みに大洗市街地を舞台に戦った連合交流戦が証明している。
発言者は体育会の生徒だったが、それだけに「格」の違いというものがわかるのかも知れない。
「……要はお金の問題なのですね」
さっきまでの勢いはどこへやら、すっかり落ち込んでしまった優花里が口にしたの
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