あきらめは愚か者の結論
第1話 伝説の終わり?
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「馬鹿め! 三度も騙されるか!」
ルクリリはそう言い放つと、75mm主砲の発砲を命じた。
彼女が狙った戦車の車内に競技弾が装甲に激突する轟音と、「シュパッ!」という気の抜けた音が続けて起こり、そのあとに当のアヒルさんの車長、磯部典子の叫びが被さる。
「アヒルさんチーム、撃破されました! 申し訳ありません!」
「……」
無線を聞いて呆然としているのは、前年の秋、第二学期から大洗女子学園副生徒会長に就任した秋山優花里。
アヒルさんチームに託したのは、大洗女子戦車道の今後を担うはずの期待の新戦力。
搭乗するのは超旧式戦車「八九式中戦車」で全国大会を戦い抜いた「奇跡の」アヒル。
それがなぜ、格下の敵にロクに戦いもしないうちに撃破されたのか。
「なぜ、なぜこんなことに!」
そう叫ぶ秋山のかたわらには、なぜか沈痛な面持ちの西住みほがいた。
聖グロリアーナと大洗女子の、単独では2回目になる交流戦の1ヶ月前。
立春過ぎとはいえ、春まだ遠き2013年2月中旬。
本来なら入山禁止の富士山麓を、迷彩服、自衛隊の呼称でいえば「迷彩服2型、機甲用」といわれる服装に身を包んだ女性30人ほどが、一列に並んで登っている。
日本戦車道連盟主催による、合宿形式の「戦車道指導者講習会」の一幕である。
この日は寒中登山演習を実施。この日は登るだけで、六合目でビバークの予定だ。
他のカリキュラムは陸上自衛隊北富士演習場と、連盟の富士学校出張所で行われ、合宿所もその出張所を使う。
この講習会は高校生が受験休みとなるこの期間に、2週間の日程で実施される。
対象者は師範昇進間近の社会人から、高校戦車道のリーダークラスまでに及ぶ。
AO入試や戦車道推薦入学、果ては海外留学が確定し、この期間手持ちぶさたになるジュニア選手のトップや戦車隊の次期リーダーとなる現二年生の成績優秀者も、この講習を受けている。
大洗女子からは、戦車隊隊長を引きつづき務める西住みほ、生徒会長で、ぽっと出でありながら全国大会でフラッグ車を3騎討ち取った砲手の五十鈴華、「午後からの天才」の異名を持ち、どんな戦車でもいきなり動かしてしまう異能者、冷泉麻子が参加していた。
もっとも冷泉麻子はこの登山講習の最中に高山病を起こし、ドクターヘリで下山した。
そしてある程度の期間入院の要有りと診断されて講習をリタイア。回復次第大洗へ帰ることとなった。
無事に六合目まで登り終えた講習生たちは、すばやく野営の用意を調える。
用意が調ったものは、その場で個人携帯糧食で夕食を取る。
実戦を想定した演習であるため、食事は火を焚かなくとも食せる「MRE」レーションである。
戦車道の指導者は、戦時には戦車兵
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