暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜剣と槍のファンタジア〜
ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
1章 すべての始まり
5話 武器調達と再会2
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空に向かって吠えているようだ。いったい、何をしているのかどうかわからないが、無防備になったその体に渾身のリニアーを叩き込む。ダイアーウルフは一瞬身を硬直させると、その身を爆散させた。


 暗い中、警戒しながら歩き、そして戦闘をするというのはなかなかに疲れるものであった。精神も消耗していたが、街に戻るという選択肢はまだなかった。レイピアの耐久値はまだかなり残っているし、ポーションだってまだある。

 また新たなモンスターを探して、歩き始めた時だった。いきなり、その視界が反転し、体に鈍い衝撃が走る。痛みもないために、自分が倒れたと認識するのに数秒の時間を要した。目の前に広がる仮想世界の星空を見て、アスナはようやく自分はあおむけに倒れているということを理解したと同時に、モンスターに攻撃されたということも理解した。

 そして、同時に視界の右上にあるHPバーにも目が行く。さっきまで8割がた残っていたHPは、今やオレンジゾーンまで落ちている。ほとんど初期装備のままだったために、ダメージが大きい。もう1、2回、さっきの攻撃を受けたならば、自分は現実世界からも永久退場することになるだろう。そのうえ、細剣も先ほどの衝撃で、数十メートル離れた場所へと弾き飛ばされてしまった。

 そこには先ほどと変わらぬダイアーウルフ。だが、それが4頭、自分を取り囲むようにして牙をむいている。

 もちろん、それは先ほどアスナが倒したダイアーウルフが行った遠吠えのせいであるが、この世界が初めてのアスナは知る余地もない。ただ、頭の中にあるのは、「自分は死ぬかもしれない」ということだった。

 しかし、命の危機だというのに、アスナの頭は冷静だった。自分は、この世界にほんの少しだけあらがって、そしてすぐに命を散らす。

 脳裏にちらりと、現実世界の母親のことが頭に浮かんだ。自分が死んだらいったいどんな顔をするんだろう。それでも、後悔はなかった。

 狭い来るダイアーウルフの大きくあいた口を見ながら、最後に思ったのは、小さいころからの憧れであり初恋の人であった。死ねば異国の地でその身を散らしたあの人に会える…



 




 しかし、衝撃はいつまでたっても来なかった。その代わりに、一陣の風がアスナの髪を揺らし、ダイアーウルフのいたたましい悲鳴が静かなあたり一帯に響き渡っただけだった。

 アスナは、ゆっくりと目を薄く開けた。そして、目の前の光景に、目を大きく見開く。そこには、濃紺のハーフコートを纏い、肩上で切りそろえられた漆黒の髪を揺らした人物が、ダイアーウルフからアスナを守るように立っていた。

「う、そ…」

 アスナの口から、小さなつぶやきが漏れた。それは、先ほどアスナの脳裏によぎった人物を彷彿とさせた。


「リア!」
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