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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
辺境異聞 9
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守にしてボルツェル城にいるわけにもいかない。セリカは通信魔導器で学院とグレンに連絡し、近日中にフェジテに帰る旨を伝えた。

「ついでにおまえのことも学院に言っておいたぞ。私の野暮用を手伝っていることにしておいた。失踪したことにはなっていない」
「ありがたい、助かるよ」
「なあに、おまえは私の魂の傷を癒してくれた恩人だしな」

 セリカの霊障が癒えた翌日。城にあった馬車のなかでも造りの良いものを選ぶと、慰謝料として頂戴した荷物を乗せて出発することにした。
 目指すは街道。そこに出てしまえばあとは路なりに進むだけだ。

「《剽桿なる獣よ・荒野を走り・我がもとへ駆けよ》」

 秋芳はこの七日の間にセリカからいくつか魔術を教えてもらっている。そのうちのひとつを唱えた。
 黒い巨躯をした馬が召喚される。肉食魔馬の異名を持つ、激しい気性の汗血馬ブケパロスだ。

「ほう、肉食魔馬か」
「こいつ一頭で並の兵士二、三〇人は相手にできる。ケチな山賊が襲ってきても蹴散らしてくれるし、シャドウ・ウルフ程度の魔獣なら襲ってはこないだろう。馬車馬兼護衛に最適だ」

 主要街道周辺は軍が定期的に街道整備を行い、市井の人々が護衛をつけずに行き来できるほど安全だが、辺境ともなれば話は別だ。
 野盗まがいの連中や熊や狼といった野生の獣のほか、魔獣のたぐいに人が襲われたという話はたまに聞く。

「自分が病み上がりだということを忘れるなよ。妙なことになっても、いたずらに魔術を使ってはいけない」
「安心しろ。少ない魔力でも呪文を工夫して威力を増幅すれば【ゲイル・ブロウ】程度でも森を根こそぎ吹き飛ばして更地にできる威力を出せる( ̄^ ̄)」
「だからそういうのをやめなさいっての。君子危うきに近寄らず、暴虎馮河の勇を奮うなかれ、だ」

 ボルツェル城を後にして主要街道に通じる支街道を進んで間もなく、思いもよらないものを目撃することになった。

 GAAAAAッッッ!!

 突如として大気を切り裂くような声が轟いた。
 なにごとかと声のした方向を見れば、遠い空の彼方に黒い影が大きく翼を広げている。点のようにしか見えないが、そこまでの距離を考えればその巨大さは容易に想像できた。
 影が翼をはためかせて悠然と空を舞ってまっすぐに翔てくると、視界のなかで影は急速に膨れ上がり、その正体があらわになる。
 巨大な翼、漆黒の鱗、長い首と尾、太い胴体、口は耳まで裂け、頭には大小三対、六本の角が生えている。背筋に沿って暗灰色の毛がなびいていた。
 竜だ。
 竜が秋芳とセリカの頭上高くを飛びすぎていった。
 猛烈な風が吹き抜ける。

「あれが、竜か……」
「竜だな」
「どヴぁきん、どヴぁきん、ならしろすヴぁー♪」
「なんだその呪文は」
「いや、竜
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